13. 光一(1)

大学生の光一は頭髪のことで悩んでいた。


つむじから、3,4㎝後頭部にいったあたりの髪の毛が妙に少ないのだ!

皮膚病なのか?

赤くただれたように見える。

しかし、光一は顔には自信があった。

女性からの人気は高い!


考えようには、すこぶる面白かった。

正面から見ると「イケメン」、後ろから見ると「ハゲ」なのだ!

心無い同級生達がからかい始める。


「ハゲ、ハゲ、ハゲ」


調子よく、光一を痛めつける。

すこぶる、面白い!


同級生の一人の竜也は、「ハゲ」に指を突き立てた。

「ハゲ」を指で、ゴシゴシとイジリ始めた。


もう半年以上、続いている......。

さすがに、光一のプライドは、ズタズタになった。


「いいかげんにしてくれ! いいかげんにしてくれ......!」

「かんにんや! かんにんや......!」


やがて、こう懇願しつぶやき始めた。

竜也は、勢いづいた!


「まだまだ、これからよ~!」


ヤクザのようだった!

竜也の指の突っ込みが続く......。

こういうイジメが一年以上続いた。


「ハゲたらおしまい!」

「尿療法が、ハゲに効く!」


断言する竜也!


光一は、とうとう流行りの「尿療法」を行うことにした!

毎朝、朝一番の「おしっこ」を飲むのだ!

生ぬるい、感じ......。気色が悪い......。


「尿療法は、精神的にきつかった......」


毎日のハードな民間療法だった!


ある日、

光一がいない、すきを見て。

竜也は、新品に近い、教科書のはいった光一のバックをくすねた。

トイレに持っていくと、チャックを開け、勢いよく「脱糞」したのだ!

たちまち、まだ新品に近いカバンの中は糞まみれになった。


「お便器かと、思ったのだ!」


竜也は、そう言い訳をした。

竜也に反省の色は、全く見られなかった。


よくある「イジメ」。

つまり、自分の「存在と生」を確かめる手っ取り早い方法。

「一番、汚い方法」

相手を「苦しめ、悩ませる」手っ取り早い方法。


「自分が生きていることを確かめることができる」


クズ以外の何物でもない。


これによって、「自分が生きている」ということを肯定する。


その喜びは何ものよりもうれしいのだ。


「殺す。しかない!」


徐々に光一は、「殺意」を感じ始めた。


あれは、雪の降る日の晩だった。

いつも通り、金曜日の「飲み会」が行われた。

散々、飲みまくり、食いまくった。

同級生でリーダー格の勇が、みんなから金の徴収をし会計に持って行った。


会計の終わった帰り道、光一が切れた。


「ウォー!」


何発も何発も光一が竜也を蹴り込んでくる。

ちなみに、光一は、フルコンタクト空手の経験があるのだ。


「一発、一発がとんでもなく重たく強烈だった!」


竜也は、倒れこんだ。

今度は、腹部に蹴りを打ち込んでいく......。


「ガァー!」


苦悶の表情を竜也は、浮かべた。


「蹴り殺してやる!」


光一はいきりたつ!

何発も何発もさらに、蹴り込んでいく。

慌てて、同級生が止めに入る!

しかし、竜也は既に虫の生きだった......。

勇たち同級生は、顔面を蹴飛ばされ血まみれの達也を見て衝撃を受けた。


「立場が逆転した」


誰もがそう思っていた。

竜也は、血だるまになって自分のアパートへ命からがら逃げ帰った。


もう達也の頭は「復讐」を考えていた。

一週間ほど、大学を休み、作戦を考えている......。

何を思いついたのか、女性の使う「パンティーストキング」をコンビニで買い求めた。

頭からそれを被る、すると顔は誰にも分からない。


「気味の悪い何かに違いない」


すると竜也は、自分のことを


「ジャンクマン」と名乗り始めた。


鉄パイプも買い求めた。

徐々に、武装化が始まったのだ。

カチコミをかけるのだ!

光一の住所はすでに「同級生名簿」で調べあげている。

あとは、いつやるか?だった。

竜也は、考えている......。

何食わない、格好で大学へ通学し始めた。


「光一のハゲ」は、相変わらずだった。


今度の金曜日の夜に「ヤルッ」そう決めた。




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