第37話 ドラゴンの尻尾切り

「漁師なら誰でもできる、だと? そのようなハッタリが我に通じると思ったか。もしそれが本当ならば『人間界は恐ろしいところだから絶対に手を出すな』という前竜王の言葉が真実になってしまうではないか! あのような臆病者の言葉が正しいわけがない!」


〝人間界はっていうか青森県がな〟

〝前の竜王に大人しく従ってればよかったのに〟

〝臆病なんじゃなくて事実を言ってるだけ〟

〝部下がこれなら新しい竜王もきっと脳筋だな〟


「ふふん。大きいから怖かったけど、しょせんはトカゲね。ここまで馬鹿なら私でも勝てる気がしてきた。喰らえ、真空斬!」


〝おお、剣聖明日香の必殺技が出た!〟

〝やっぱ斬撃を飛ばすのってシンプルに格好いいよな〟

〝だが効かない!〟

〝顔面に当たったのにw〟

〝普通のダンジョンのモンスターなら一撃なのになぁ〟


「くくく、今のは攻撃のつもりか? 攻撃とはこうやるのだ!」


〝ドラゴンの角が光った!〟

〝電気がバチバチしてるぞ!〟


「ここは私に任せてください。防御障壁を張ります!」


〝アミーリアたんが電撃を防いだ〟

〝さすがは塔の魔女だぜ〟


「アミーリアさん、ありがとう。助かったわ!」


「はあ……はあ……凄い威力です……」


〝一発防いだだけでかなり疲れた感じだな〟

〝もう魔力切れ?〟


「くくく。やはり人間など、この程度か。先程の男が特別なのだろう。おそらく、こちらの世界で最強クラス。それでも我のほうが遙かに強い!」


〝拓斗さんとかシルヴァナさんのほうが強いんじゃね?〟

〝でもシルヴァナさんですら青森最強ってわけじゃないんだろ?〟

〝やっぱ青森って怖い〟


「まずは手始めに貴様らを焼肉にして食ってやろう。その次にさっきの男。そして町に行けば大勢の人間がいるのだろう? 食べ放題というやつだ。くくく、実に楽しみだ」


〝俺も焼肉食べ放題に行きたい〟

〝焼肉食べながらビール飲みたい〟

〝ドラゴンも酒飲むのかな?〟

〝飲むんじゃね? ヤマタノオロチだって酔っ払ったところを退治されたわけだし〟

〝焼肉食べ放題という概念があるとかドラゴンに親近感湧いた〟

〝でも人間を食うんだろ?〟

〝龍飛崎の民はドラゴン肉食ってんだからおあいこだろ〟

〝ドラゴンが正当防衛してるだけに思えてきたw〟

〝やっぱ結界ってドラゴンのためにあるんじゃね?〟

〝ドラゴンブレスが来たぞ!〟

〝そして拓斗さんが光の剣を構える〟

〝打ち返した!?〟

〝剣じゃなくてバットだったか〟

〝ドラゴンブレスがドラゴンの口の中に帰っていくw〟


「あづっ! 熱゛ッ! 貴様、いきなり口の中に炎を入れるとはなにを考えている! 火傷するだろうが!」


「お前の炎だし……自分の炎で火傷すんなよ」


「出したところと違うところに入ったんだ!」


〝違うところってなんだ〟

〝怪獣図鑑に書いてあるじゃん。石油袋とかジェット袋とか適当な名前の内臓〟

〝石油袋に炎が入ったら燃えちゃう!〟

〝酸素がなきゃ大丈夫だろ〟

〝ねえ。このドラゴンなんか可愛くね?〟


「くくく……どうやら油断しすぎたようだな。それでは我の本気を見せてやろう。我の炎で跡形もなく消えるがいい」


〝今度は火の玉じゃなくて火炎放射器みたいに繋がった炎だ!〟

〝拓斗さん、竜巻で海水を巻き上げて消火!〟

〝おおっと、ドラゴンの炎が黒くなったぞ〟

〝暗黒の炎とか強そう〟

〝しかし拓斗さん、光の剣をくるくる回して風を起こし、黒い炎を押し返した〟

〝ドラゴンさん、地面でのたうち回る〟

〝あげくに海に落ちたw〟


「あっっっっっっっづっ! 暗黒の炎で跡形もなく消えるところだった……貴様、なんて酷いことをするんだ! 血も涙もないのか!?」


「俺らに暗黒の炎を浴びせるのはいいのかよ」


「人間はドラゴンに食われる運命だからいいんだ!」


「でも跡形もなく消したら食えなくね?」


「…………くくく。馬鹿め。わざわざ教えてくれるとは、おめでたい奴だ。そうと分かった以上、生で食ってやる。人間の躍り食いだぁぁぁっ!」


〝突撃してきた〟

〝脚で地面を蹴った上に翼で加速だ!〟

〝あんなデカいのが体当たりしてきたら、それだけでもう必殺技だよ〟

〝対する拓斗さんは……〟

〝拳を突き出したぁ!〟

〝冗談みたいなサイズ差なのにドラゴンが吹っ飛ばされたw〟

〝おい、この特撮デキが悪いぞ。え、ライブ配信なんですか?〟

〝ドラゴンくん、帯島の岩山にぶつかって止まった〟

〝海に落ちなくてよかったね〟

〝落ちたほうが衝撃が少なかったのでは〟

〝なんか鋭利なものが空を舞ってね?〟

〝角じゃね?〟

〝ドラゴンの角だ!〟

〝魔王を封印するためのアイテム〟

〝そういや魔王とかいたなw〟


「いっだぁぁぁいっ! なんだ、この痛みは。我はどうなって……あっ、それ我の角!? 角折ったの!? こないだ生え替わったばっかりなのに!」


「んん? あんたら、まだドラゴンと戦ってたのか。しかも殴って吹っ飛ばすなんて大したもんだ。龍飛崎でも即戦力になれるぞ。まあ、あとは俺たちに任せてくれ。すぐに美味いドラゴン料理を食わせてやるからよ!」


〝さっきのおじさんが仲間を連れてやって来た〟

〝三十人くらいいる〟

〝青森県の漁師三十人の軍勢とか世界を滅ぼせそう〟

〝装備品が包丁ってのがいいな〟


「人間がこれほど凶暴な種族だったとは……まさか前竜王が正しかった……いや、違う! 我が絶不調なのだ。結界を越えるのに体力を使い果たしたのだ。そうに違いない。今日のところはこのくらいで勘弁してやろう。さらばだ人間ども」


「ああんっ!? 無事に帰れると思ってんのかぁ!」


「ひっ! これで勘弁してください。我の尻尾は美味しいので!」


〝ドラゴンの尻尾切りw〟

〝また生えるのかな?〟

〝飛んで逃げた〟

〝ポータル開いて消えちゃった〟

〝竜界に帰るのは簡単なのか〟


「ちっ……逃がしたか。だけど怪我人もなく尻尾が手に入ったからいいとするか。よーし、今からドラゴン肉祭りだ。あんたらのおかげで尻尾が手に入ったみたいだから、好きなだけ食べてくれ! ドラゴン肉だけじゃなく魚も出すぞ!」


〝海鮮だ!〟

〝帯島の店には行けなかったけど美味しいご飯にはありつけたな〟

〝ドラゴン料理ってどんなのかな〟

〝ワクワク〟

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