寝息

 中学を卒業したあと、十二年間住んだ旭区希望ヶ丘から金沢区釜利谷に引っ越した。

 雑木林に面した二階建て。僕は雑木林が見える二階の角部屋をあてがわれた。

 それは初日から始まった。

 寝ようと電灯を消して横になる。

 すると、枕元で自分のものではない呼吸音が聞こえる。

 吸って、吐く。

 吸って、吐く。

 はっきりと聞こえる。

 誰かと添い寝をしているように、はっきりと。

 呼吸音が聞こえる以外に害はない。

 ただ、人がいないのが不思議なほどはっきりと聞こえる。

 勘違いかと思い、息を止めてみたこともあるが、呼吸音は止まらなかった。

 それは途切れ途切れに、しかし何年も続いた。

 家の裏手、雑木林は、禅林寺という寺社の墓地に続いていた。

 

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