第39話 宝探し~弐~

「ここが……森林エリア」


 相田あいだセイナは、ドレス姿で歩きづらそうにしながら、森の中を歩いていた。


 しかし、一向に宝は見つからない。

 一回、何かキラキラと光る物を見つけた。


 木に開いた小さな穴に、ハート形の結晶が落ちていたのだ。


 喜んでセイナは取り出したが、それはセイナの手に渡った瞬間、ぼわんっと煙を出して消えてしまった。


 後に残ったのは、「はずれ」と書かれた小さな紙切れだけ……――。


 やはり、45もの「宝」が隠されているのだから、こういうダミーもいくつかあるのだろう。


「はぁ……運が悪いですね……」


 これまで見つけた「宝」3つは全て偽物ダミーだった。

 どこか見逃しているところがあるのではないか——。


 念入りに探すが、一向に見つからない。


 歩き続けて、足は疲れたし、ドレスのすそも黒ずんでいる。

 セイナの首にかけてある不思議な紋様をした結晶が、キラリと光った。


「ハァ、ハァ……」


 息も上がり、体力も、判断力も落ちてくる。

 その状態で敵に襲われれば……確実に殺されるだろう。


「もう……どこに、あるというのですか……⁉」


 すると突然、森に霧が立ち込めた。

 視界不良となり、変なにおいも漂ってくる。


 セイナは反射的に、自分の鼻と口をハンカチで塞ぐ。


 すると、パッと視界が開けた。

 そして、セイナの目の前には建物が建っていた。


 真っ白で、高さは7mくらい。

 窓は大体5つほどのようで、全て若草色のカーテンが閉められている。


 なぜかその建物の周りは植物が生き生きとしていて、長くツルを伸ばし、建物に幾重も重なって巻き付いていた。


 セイナの目の前には―――薄緑色の布がかかった、扉がある。


 ずっしり重そうだったが、セイナはそれに引き込まれるのを感じた。


 ゆっくりと歩み寄り、ドアに触れる。


 ギギギギギィ………

「……‼」


 ゆっくりと、ドアが自動的に開かれていく。

 セイナは中に入った。


 バタンッ!


 勢いよく扉が閉まる。

 すぐにセイナは振り返り、扉を押すが、開かない。


 思いっきりこぶしを打ち付けて見ても、傷一つつかない。


 どうやら、閉じ込められたらしい。


「ここは………?」


 ビーッ!


 何かの警報のような音が鳴った。

 すると、目の前にモニターが現れ、文字を映し出す。


『参加者2名が集まりました。これより、森林エリアでの争奪戦を開始してください』

「な、何のこと……?」


 セイナは戸惑う。

 すると、後ろからため息が聞こえた。


 振り返ると、そこには———青天せいてんはくが立っている。


『参加者が1人になると「宝」が現れ、それを扉にはめ込むことで、扉は開き、脱出することができます』


 セイナが扉の方を見ると、確かに、ハート形の小さなくぼみが、扉につけられている。


『もしも30分経ったとき決着がつかなければ、ランダムで片方を脱落させ、1人がここから出ることができます』

「えっ。それってつまり……」


 もう一度、セイナははくを見た。

 ここから出るためには———人を、仲間を、殺さなければならないってこと。


「……そんな………」


 セイナの口からこぼれた言葉が、霞んで消える。


『尚、この「宝」は、このイベント中に死んだ人物を復活させることはできません。「宝」は1つで一気に5人を復活させることができます』


 つまり、ここで手に入れられる「宝」が5つ分。

 そして、この仕組みは他の8つのエリアでも適用されるはず———。


 エリア9つ。

「宝」を手に入れるには9×2で18人必要。


 今の人数は、16人。

 だから誰かを復活させて、イベントに参加させなければ、全ての「宝」を手に入れることはできない。


 そして———もしも、18人そろったとしても。

 2分の1が脱落して……9人になる。


 そこで復活する人数を合わせると、40人。


 参加者の人数は、合計で最大40人まで増やすことができる。


 しかし同時にまた、ここまで生き残ってきた強い能力者たちが、殺されるということでもある。


 それは、人数が増えればいいのではなく、強い人材がいなければならない、ということ。


 すぐに脱落してしまった弱い人間ばかりになれば、参加者側は圧倒的に不利だ。


 それなら、まだ残っている鬼陣営7人の方が強い。


(入らなければよかった……‼)


 セイナは後悔した。

 デスゲームの運営が、おとなしく普通の復活イベントなぞ開催するわけがない。

 そのことを、セイナは分かっていなかった。


 宝に目がくらんでしまった。

 無条件で復活させてくれるのだと、信じ込んでしまった。


 それが———敗因。

 セイナが、今、自分が生き残るには、1人落とすしかない。


「う……あ………」


 涙を拭うが、何度も雫は垂れてくる。

 しかし、はくは違った。


「……まぁ、仕方ない、ですね。猫桜ゆゆ――さんを殺した人じゃなかった、ですけど。

 倒して、猫桜ゆゆさんとはしらさんを、復活させるん、です」


 言葉は相変わらずたどたどしいが、明確な意志の宿った瞳。

 それは、普段のはく以上に澄んでいる。


背風景変更ステージ・チェンジ


 経過時間:1日1時間45分

 残り時間:8日22時間15分


 参加者:50/16

 鬼:10/7


 てるてる:1/1

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