Suicide×Suicide

愛内那由多

第1話

 『その屋上から飛び降りたら―ふたりは永遠の絆を手に入れる』

 学校に言い伝えられている伝説。大正時代からこの伝説は存在しているらしい。

「これ―どう思う?私は―ロマンがあるなって思う」

「そうですか?『永遠の絆』なんて…どうでもいいです」

 私はそう答えたが―先輩は続ける。

「ねぇ―この『永遠の絆』手に入れに行かない?」

 どうでもいいと言ったのに―まだ誘えると思っているこの人は、なんだう。私のこと―見えていないのかな、とさえ思う。

「だって―あんまり私は生きていたくないし。この世界は―ひどく気持ち悪いもの」

 先輩は―この世界が嫌いらしい。多分―悲劇が嫌いなんだと思う。人が人を殺したり、盗みが起きたり、嘘をつかれたり。そういうものすべて―受け入れられないんだ、と。

「生きているだけで―辛いもん。だったら―死んでいいでしょ?」

 私は先輩ほど世界を憎悪していない。しかし、この世界が素晴らしいとも思っていない。

「だったら、この命を『永遠の絆』の証明に使ってもいいかなって…」

 先輩は―悲しそうに言った。

 この人は―そのうち自殺してしまいそうだ。

 そう思った。

「今、憎んでいる世界に無様に生きているくらいなら―いっそロマンを求めて死ぬのもいいと思わない?」

 私は―先輩と共に屋上に登ることにした。

 先輩は私のことなんてどうでもいいんだと思って―悲しくなった。それがよかったと思うこともある。基本的に先輩の眼中に私がいない。ゾクゾクするではないか。

 けれども―今回はそれがどうしようもなく悲しい。

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