第2話:俺氏、クレイジーだと呼ばれる

 この女と喋っていても時間の無駄。

 それは分かるが、俺の言い分を言わなければ気が済まない。

 同情作戦でも使ってみるか。


「お前に俺の気持ち分かるか?」

「分からないですし、分かりたくもないですね」

「少しは話を合わせろ。俺じゃなかったらブチギレだぞ!」

「なるほど。激おこぷんぷん丸案件ですかぁ〜」

「久々に聞いたわ、その羅列られつ

「社内のマニュアルになってまして」

「マニュアルにギャル語を入れるな!!」


 マニュアルにギャル語って大丈夫か?

 ワールドバーガーの経営陣が気になるぞ、マジで。


「働き方改革と呼ばれてるでしょ? アップデートです!」

「絶対政府が求めているのと違うよ、それは」

「私が提案したら、亡き店長もいいねと言ってくれたのに」

「お前の提案かよ!! やっぱり、店長消えたのか……」


 ワールドバーガーが抱えてる闇がどんなものか分からない。

 ただ、全国にチェーン店を展開する素晴らしいファーストフード店だ。それはもう計り知れないほどの闇があるのかな。


「俺が消えても、すぐに第二、第三の店長が現れるだろう。そう言っていたのに……」

「店長は魔王か何かかよ、余計気になってくるわ」

「お肉のことだけは……お肉のことだけは調べるのは……」

「調べねぇーよ。てか、真実知ったら、俺も消されそうだわ」

「チッ……極上の肉を一匹逃しちまったぜ」

「従業員だけではなく、お客様もお肉扱いよ。やべぇ〜な」

「信者の応援とアンチのお肉で、ワールドバーガーは成り立っているのに……」


 確かに、俺の行動はアンチに見えるかもしれないがな。

 ただ、理不尽にキレてるとは思われたくないな。

 俺は誠実なワールドバーガー大好きマニアなのだ。


「こっちはハッピーセットのおもちゃを手に入れることに、命を賭けてるんだよ!」

「で、おもちゃを手に入れられなかったということは、命を賭けた勝負に負けたと」

「そんな闇のゲームシステムがあるわけねぇーだろ。ハッピーセットにはメニューのなかにおもちゃが入ってんだろ、元々な。それぐらい分かるだろうが!!」


 やっぱり、コイツとは話にならない。

 でも、その前に聞いておきたいことがある。


「一つだけ質問いいか?」

「スリーサイズ以外なら何でも大丈夫です」

「質問の幅広いな。人肉騒動について聞くぞ、ゴラァ」

「で、質問とは?」

「お前さ、何歳だ。絶対に大人じゃねぇーだろ?」


 話が噛み合わない。

 ていうか、お客様を完全にバカにしてやがる。

 責任感がほとんどないバイトなのだろう。


「えぇ〜。逆に、私、何歳に見えますか?」

「だから、俺からお前は見えねぇーんだよ」


 合コンのあるあるじゃねぇーかよ。

 何歳に見えるかと言われても、毎回困るんだよな。


「おかしいですね、電話なのに」

「電話だから見えねぇーんだよ。さっきと同じネタを使うな」

「こ〜いうのって、天丼って言うんですよね?」

「してやったりと思ってるだろ?」


 俺の言葉に、電話の主は「ええ」と驚きの声を出して。


「やっぱり私の顔が見えてるんですか?」

「見えてねぇーよ。思惑が分かったからだよ」

「凄い、エスパーさんですね」


 褒められるのは素直に嬉しい。

 まぁ、俺はエスパーさんではないがな。


「違うよ、俺はただのクレーマーさんだよ」

「クレイジーさんの方がお似合いですけどね」

「どういう意味だ、お前。絶対バカにしてるだろ」

「バカにはしてません。コケにはしてますけど」

「一緒の意味じゃねぇーかよ、この野郎が!!」

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