ハッピーセット頼んだらおもちゃが入ってなかった。ブチギレ電話を掛けたら「お届けできません」だと。今から店舗に殴り込み行くけど、スマイルも一緒に注文しようと思う
第1話:俺氏、怒りのクレーム電話を掛ける
ハッピーセット頼んだらおもちゃが入ってなかった。ブチギレ電話を掛けたら「お届けできません」だと。今から店舗に殴り込み行くけど、スマイルも一緒に注文しようと思う
平日黒髪お姉さん
第1話:俺氏、怒りのクレーム電話を掛ける
大人気ファーストフード店の『ワールドバーガー』で、大好物のハッピーセットを購入した俺は、浮き浮き気分で自宅に戻った。それからジャンキーな味付けのバーガーとポテトをたらふく食い尽くしたのだが、とあることに気が付くのであった。
「ハッピーセットなのにおもちゃ入ってねぇーじゃん!!」
俺の名前は山田。
何処にでも居る平凡な男子大学生だ。
と言えど、その姿は偽りに過ぎない。
俺の正体は——。
ハッピーセットに付随するおもちゃを集めるマニアだ。
「……これはクレーム案件だよな?」
ハッピーセットのおもちゃが入ってなかった。
それだけでブチ切れ電話を掛ける。
他の人に話せば、首を傾げられることかもしれない。
だが、マニアの俺には許せなかった。
「はい。こちらワールドバーガーです」
電話を掛けると、出たのは若い女性だった。
快活な声で、如何にも接客慣れしてそうだ。
この人なら俺の怒りを分かってくれるだろう。
「いやぁ〜ね。今日ね、そちらの店舗でハッピーセットを頼んだのよぉ〜」
「なるほど。通りでハッピーなお顔で」
「ハッピーじゃねぇーよ。てか、お顔ってどうやって分かるんだよ。こちとら、電話で喋ってるんだよ。分かるわけねぇーだろうが」
「あぁ、すみません。うっかりしてました」
「うっかりなレベルじゃねぇーぞ、これは」
俺が叫んだあと、数秒間の沈黙が起きた。
その後、相手が驚いたように言う。
「それで言いたいことはこれだけですか?」
「終わりじゃねぇーよ!!」
「失礼ですが、本題のほうは??」
俺は怒りを込めて、相手にぶつける。
「ハッピーセット購入したのにオモチャが入ってなかったんだよ!」
「失礼ですが、もう一度お願いします」
「ハッピーセット購入したのにオモチャが入ってなかったってつってんだよ!」
「失礼ですが、もう一度お願いします」
「ハッピーセット購入したのにオモチャが入ってなかったって言ってんだよ。何回も言わせるな、こんな恥ずかしいこと」
電話の主は理解できたようだ。
あっ!! と少し大袈裟な声を出してから。
「そうですよねぇ〜。申し訳ないです」
大変恐縮ですという声で続けて。
「ハッピーセット購入したのにオモチャが入ってなかっただけで電話を掛けるなんて、それはもうお恥ずかしいことですもんねぇ〜」
「お前、完全に人様をバカにしてんな」
「バカにはしてませんよ」
女性はキッパリと言い、それから続けて。
「ただ、少し変わってるなぁ〜と思ってるだけです」
「お前に言われたくねぇーよ!!」
「あ、それ以上叫ばれると、出禁になりますよ?」
「電話なのに? 電話で出禁とか初めて聞いたよ」
ワールドバーガー愛好者だけどさ。
電話で出禁にされた男なんて、伝説にもほどがあるだろ。
「あ、今反抗的な態度を取ったので、出禁みたいです」
「ワールドバーガー厳しいな。お客様に容赦ねぇーな」
「お客様ではなく、ライバル会社とアンチに厳しいだけです」
「俺、アンチ認定されてるの? さっきの一言で。もう意味が分からねぇーな。どうなってんだよ、マジでよ」
「安心してください。後日、そちらへお手紙が届くと思うんで、その書面をご確認ください」
「それ完全に出入り禁止の通告書だよね??」
本当、前代未聞だな。
この女と喋っていても話にならない。
「もういいよ、店長に代われ。店長に」
「店長は消えました」
「あ? なら他の偉い奴に代われよ」
「申し訳ございません。現在、他の偉い奴は切らしてまして。私もこのままでは……いつの日か消されると思います」
「ワールドバーガーどんな闇を抱えてんだよ!! 怖いわ」
「お肉のことは調べないでください……お肉のことだけは」
「絶対、これは人肉が入ってるなぁ!! おい!! 嫌な現実を知ってしまったよ、今めちゃくちゃ鳥肌立ってるよ、俺は」
もう二度とワールドバーガー食えねぇ〜よ。
ウエハース食わずにカードだけ集める不届き者と同じになるぞ、このままじゃあ。本当……裏話はやめてくれよ。
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