第1章 暴走少女 27

「夢・・・夢をね、見たの・・・。おばあちゃんが・・・、私の名前を呼ぶの、けど私は分からなくって、目の前がまっしろになって・・・。そしたらね、家もね住んでるところもね・・・おばあちゃんもね、無くなっちゃった・・・」


 よほど怖かったに違いない。

 少女はグスッグスッと堪えていた涙を流し始めた。大好きなお祖母ちゃんや、この町が無くなってしまう夢を見て精神的に不安定になったのだろう。


「でもね、天使様がね、大丈夫だよって。安心して言いよって言ってくれたの」


 話すと少し楽になったのか、蒼色の目に涙を浮かべていた少女だったが笑顔が戻った。黒入は少女の背中をポンポン軽く叩いた。


 天使か。

 本来であれば、一個人に天使が話しかけることなどまず無い。となれば、これは信心深い彼女のことを想い顕現したのか。で、あれば夢とは言え怖い思いをさせる意味などない。精神的に不安定にし、誘い招きこの子を乗っ取ろうとしているのか。


 決定的なのは、彼女から溢れている力が『呪力』というところ。


 本当の『神』の手先の力であれば、呪いの力など溢れるはずもない。

 もっと神秘に満ち溢れた、『奇跡』の力だ。

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