第22話 次なる問題


 結局、バスケの試合は負けた。

 最後のゴールの破壊により無効特典となり、逆転負けをしてしまったのだ。

 だが、バスケの試合は負けたが、クラスの総合点数では一番であり、クラス優勝を果たした。


「今回のMVP賞として菊池くんには金の星を贈呈します」


 担任から俺は金の星を贈呈された。これに二つ目となる。


「おめでとう。桃矢さん。球技大会で金の星を受け取ったのは桃矢さんだけですよ」


「ありがとう。心も星を受け取ったんだろ?」


「はい。私は銀ですけどね」


 試合の勝ち負けも重要だが、それまでの経緯もまた重要で活躍した生徒には銀の星を渡される。

 心もその一人で銀の星を贈呈されていた。


「私も星、ゲットしたよ」


「意外にも私も星を貰いました」


 美紗都と佐伯さんもそれぞれ銀の星を手にしていた。

 活躍が評価された証である。


「ちょっと待って! 何で僕だけ星貰えないの? おかしくない。意味分からないんだけど!」


 鳴川はピーピーと俺の前で愚痴を溢していた。


「バーカ。あんたは練習サボっていたでしょ」


 美紗都は突くように言う。


「それは最初の頃だろ? 最後は真面目にしたじゃないか」


「それが普通ってことでしょ。プラスαが足りないってことよ」


「な、なんだって。じゃ君は何をしたって言うんだよ?」


「それは常に努力を重ねたことと私、目立つし」


「それだったら僕だってそうじゃないか」


「別の意味で目立つのよ。あんたは!」


「どう言う意味だよ!」


 美紗都と鳴川の言い争いに俺は止めた。


「まぁまぁ、次、頑張ろうよ。今回はダメでも次は評価されるよ。きっと」


「菊池くんはいいよね。金だし」


 俺が間に入るのは逆効果のようだ。


「はいはい。その辺にして片付けしてよね。まだ終わっていないんだから」


 佐伯さんはクラス委員として発言した。

 それにはどうしようもなく渋々と鳴川も美紗都も従うしかなかった。


「菊池くん。そういえば生徒会長が生徒会室に来て欲しいって言っていたよ。あと、天山さんも」


「椎名さんが? 分かった。すぐに行くよ」


 球技大会の片付け作業の最中、俺と心は生徒会室へ向かった。


「失礼します」


「失礼します」


 生徒会室に入ると椎名さんは生徒会会長椅子に座っていた。


「来たわね。菊池くん。天山さん」


「えっと、話っていうのは?」


「そうだ。マドレーヌがあるんだけど、食べる? 紅茶でも入れましょうか」


「え、あ、はい」


 緊迫した雰囲気を予想していたが、茶菓子を用意されてまったりとした空気が流れ込む。


「知り合いから頂いたものなんだけど、どうかしら?」


「はい。凄く美味しいです。ありがとうございます。先輩」


 椎名さんと心は談笑しながら紅茶とマドレーヌを食す。

 まるで女子会のような雰囲気に俺は取り残されていた。


「あ、あの。椎名さん。俺たちを呼び出したのは茶会をするためですか?」


「いいえ。少し問題があってね。菊池くんたちに相談したかったのよ」


「まさかまた星の盗難ですか?」


「まぁ、それと近いことかな」


 ピクリと俺は一気に緊張の糸が張り巡った。


「実はここ最近、不審者の目撃情報が報告されているの」


「不審者……ですか?」


「えぇ。学校の周りで不審人物がうろついているって話。学校の中にはないけど、登下校の時に頻繁に目撃があるの」


「警察には相談したんですか?」


「えぇ。パトロールの強化はしてもらっているけど、現状、大きな事件にはなっていないから警察も動けないのが正直なところ。そこで菊池くん。君に頼みたいのはその不審者を探って欲しいの。何が目的か、うちの生徒に危害がないのか。生徒たちの不安を断ち切るために」


「なるほど。そういうことですか。お安い御用です。俺が不審者を調べてみせますよ」


「わぁ、頼もしい。流石、菊池くん。頼りになる」


 なんか椎名さんに乗せられているような気がするが、皆のためになるなら俺が動かなければならない。


「私も桃矢さんに付き合います。一緒に不審者の正体を暴きましょう」


「あぁ、ありがとう。でも心は危ないから危険行動は避けて欲しい。手出しするなとは言わないけど、出来るだけ見守る方向で動いてくれた方が助かる」


「分かりました。私、桃矢さんの指示に従いますので何なりと仰って下さい」


「お、おう。ありがとう」


 やけに素直だな。いや、それくらいの方が俺としては助かるのか。

 それにしても不審者か。無害ならいいけど、もし何か狙っているのだとしたら早いところ対処しなければならない。これは重い仕事になりそうだ。

 だが、必ず解決してやる。俺は頼られているのだから。

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