第3話 お食事券プレゼントキャンペーン

「じゃあまずは、懸賞告知のポスターを作りましょう」


「どうすればいいんじゃ?」


「そうですね。シルヴァさん。一応もう一度だけ確認なんですが、今回のプレゼントとして料理無料券を十枚配る。それでいいですか?」


「ああ、それでいい」


「シルヴァさん。この店の名前は?」


「ん?店の名前?店の名前なんてないぞ。シルヴァの店じゃ」


「な、なるほど。では、シルヴァの店で告知文を考えてみます」


俺は紙にペンを走らせて、キャンペーンの告知文を書いた。


不思議な事になぜか異世界の文字が分かり、スラスラと書くことができた。




――シルヴァの飯屋、お食事一回分無料券プレゼントキャンペーンのお知らせ。


メリウスの町の外れにある飯屋、シルヴァの店には、とても美味い飯が沢山あります。


意外と知らない人も多いのでは?


幸運な方、十名様になんとシルヴァの店で使えるお食事一回分無料になる食事券をプレゼントします。


応募方法は至って簡単。シルヴァの店宛に氏名と住所を書いた手紙を送るだけ。


応募は誰でも可能です。


抽選日は、一週間後の正午。抽選会場は、シルヴァの店になります。


抽選の様子は、公開します。


幸運をつかむのは果たして誰か?


奮ってご参加ください。




シルヴァの飯屋より。




「こんな感じでどうでしょう?」


「おお、なんだかワクワクするのお」


「これを目立つ場所に貼りましょう」


「ならば商店街の掲示板と、ギルド掲示板に貼るのがいいじゃろう」


「では次に賞品になるお食事券を作りましょう」


「ふむ」




手書きでシルヴァの店、食事無料券を十枚作った。




「さて後は、告知のポスターを掲示板に貼りにいきましょう」


「なら幸道。俺がお前に町の案内も兼ねて付いて行ってやるよ。一緒に行こうぜ」




その様子を横で見ていたジョージさんが言う。




「ありがとうございます。ジョージさん、では案内よろしくお願いします」




俺はジョージさんについていき、メリウスの町の中心地へと向かった。


しばらく歩くと露店が沢山並んでいる場所へと来た。




「じゃあまずは、商店街からだ。掲示板は誰でも使うことができる。良く目立つから宣伝にはもってこいだ」


「なぜシルヴァさんは、ここに貼らなかったんでしょう?」


「貼っても効果がなかったんだよ。町外れまでわざわざ来なくても、飯屋は沢山あるからな。客は入らないさ」


「なるほど。でも今回は目をひきますよ。なんたって懸賞付きですからね」


「ははっ。だといいな。俺もシルヴァの飯屋が繁盛してるところ、見てみたいぜ」




掲示板に告知のポスターを張り付けた。


すると人が集まってきた。




「なんだ?なんだ?懸賞って何だ?」


「シルヴァの店?そんなのあったっけ?」


「無料お食事券が当たる?何それ!!」


「へえ!!住所と名前を書いて手紙送るだけでいいんだ。簡単」


「抽選会場はシルヴァの店か。面白いイベントだな」


「幸運をつかむのは果たして誰かか。おもしれえ。俺、参加するぜ」


「私も!!」


「俺も応募しよう」




なんだか凄い反響だ。これは期待できそうだ。




「良い感じじゃないか。この調子でギルドの掲示板にも貼りにいこうぜ」


「はい」




それから少し歩くと、ギルドへとたどり着いた。


中に入ると受付の女の人がいるので、声をかける。




「あら、ジョージさん。こんにちは」


「よお、ベレッタちゃん。今日も可愛いね」


「ありがとうございます。依頼をお探しですか?」


「いや、別件だ」


「あら、そちらの方は?見た事がない方ですけど、冒険者の方ですか?」


「ああ、そうだ。こいつは、幸道ってんだ」


「どうも、万亀幸道です」


「今日はよ、ギルド掲示板に幸道が作った懸賞の告知ポスターを貼って欲しくてきたんだ」


「懸賞?何ですか?それは」




俺は懸賞の告知ポスターをベレッタさんに見せた。




「ええ!?お食事無料券プレゼントですか!?凄い」


「ただし当たるのは、幸運な十名の方のみです」


「これを貼ってもらいたいんですが、いいですか?」


「ええ。皆、お祭り事が大好きですし、興味を持って参加してくれる人も沢山いると思いますよ」


「ではよろしくお願いします」


「承りました」




それから俺達は、ギルドを出てシルヴァの店へと戻った。




「お、戻ったか」


「はい。商店街とギルドの掲示板に貼ってきました。皆、食いつきが良かったので、それなりに応募者がいると思いますよ」


「おお、そうかそうか。楽しみじゃのう。ところで幸道よ」


「ん?なんですか?」


「あんた行く所はあるのかい?」


「ああっ!!しまった!!完全に忘れていた。俺、宿無し。金なしだ。どうしよう!!」


「うちに空き部屋がいくつかあるからの。妻は病気で若い頃に先に逝ってしまったし、息子は騎士団に入団していて帰って来ん。少々埃っぽいが、それでも良かったら使ってもらってかまわない」


「本当ですか!?助かります。ありがとうございます」




俺はシルヴァさんの好意により、なんとか宿と飯を確保することができた。


心優しい人に助けてもらえて、本当に俺はツイている。


よし。なんとしても今回の懸賞企画、成功させて恩返しするぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る