第3話 早速スローライフ?

洗濯と掃除で昨日は外が暗くなってしまったので夕食を作りのんびり裁縫をし、眠くなったら寝る。

まるで小説にあるスローライフの様な生活を送っているわね。

朝食の用意をしながらそんなことを考えていると勝手口を叩く音がする。


「はーい、どなた?」

パンケーキを焼いていて手が離せなかったので扉に向かって声をかけるが、扉が少し開いて顔を覗かせたのはまだ10歳くらいの少女。

「あ、あの……」

とっても大人しそうな子だわ。

「なにかごようかしら?」

ちょうどいい焼き色になったパンケーキをお皿に移して女の子の前に行き目線を合わせてから声をかける。


「これ!どうぞ!」

差し出されたのはカゴに入ったパンだったわ。

「え?」

「これから2日に1度届けるように言われてて……」

「そう、わざわざありがとう。」

パンが無かったので小麦粉でパンケーキを焼いていたのだけれどもこれからは届けてもらえるらしいわね。

「それだけ伝えろって言われて……」

「届けてくれてありがとう。また2日後に届けてもらえるのを待っているわね。」

「っ!うん!」

女の子は余計な事を話すなと言われているのかしらね。まぁ嫁に迎えた女を愛人とすり替えてしまう男の事だ根回しはある程度してあるのだろう。

私がここから逃げ出せないように外へ繋がる場所には門番が居るようだし元々隠居用の小屋だからか本邸から少し離れては居るが一本道が整備されてるから他の道はけもの道すらない状態で家の前の小さな花壇は昔は庭師が手入れしていただろう草花が野生化している状態だしね。


どこかに綻びとかないかはこれから調べていくとしてもいつ人が来るか分からない状態では下手に動き回って怪しまれたりする方が困るからまずは生活する場所を整えることに専念するしか無さそうね。

まぁ抜け出そうと思えば出来る秘策?はあるんだけど騙されたまま引き下がるのはちょっと悔しいし降って湧いたスローライフな生活をもう少し満喫したいなーって思っててね。

あのクズも実家に一応支援してくれたので暫くは思い通りになっていると思わせておこうかしらね。



実は私には前世の記憶がある。

前世の私は日本という国で恋愛には憧れはあるもののちょっとオタク気味な平凡なフリーターでやりがいはあるもののちょっとブラックな飲食店勤務なアラサーだった。

こんな生活はいつまでも出来ないよなーと資格でも取って転職しようかと思い始めた頃に繁忙期に入り疲労困憊で駅まで重い足を引きずっていた時酔っ払い同士の喧嘩の横を通ってしまった所までは覚えているんだけど、ドンっと何かにぶつかったあと頭に強い衝撃を感じるのと誰かの叫び声が最後の記憶だったりするのできっとそこで私の人生が終わったって事なんだと思うのよね。


だからこそ、転生に気づいた時この世界の不便さと魔法が使える楽しさ、貧乏だけど優しい家族に恵まれたことへの感謝は感じたけど。

前世でろくな恋愛してないだけあって恋に恋して騙されてたんだとは思うの。


休みの日に読み漁ったネット小説のテンプレでは前世の知識で成り上がり!みたいなのあったけど特産品もろくにない我が領はは先立つものが無さすぎてアイディアがあっても実行出来なかったのよ。

あのクズの支援によって温めてたアイディアが商売となった事だけは感謝よね。なのでいつまでも貧乏領地だと思って侮ってくれていれば助かるし、支援金を利子つけて叩き返す位まで(慰謝料としてそのまま貰う気だけど)事業が安定するまでは行動に移す気はないのよね。


魔法はイメージが大切というわけで、私は通信魔法も開発してたりするけど流石にコレはバレると軍事利用とかめんどくさい事に巻き込まれる可能性があるから両親と私しか知らない。

週に1度月の日に(1週間は5日で月の日は休日の前夜になる)寝室の鏡に通信魔法を繋げる約束を元々していたのよ。

旦那様になる人と仲良く出来てて通信している余裕がなかったら無理しないでねと言われていたけど、無理以前の問題よね。

ちょうど今日は月の日だから夜にでも現状は両親に心苦しいけど伝えておかないといけないので正直気は重い。


自業自得なので諦めて話すしかないのはわかっているわよ。

通信に使う鏡のある部屋は新妻に与えられる部屋とはかけ離れた重厚感のある小屋の部屋だからね

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