貸出カードに見る名前

光城 朱純

第1話 図書室の本

 図書準備室の机の隅で、誰が置いたかわからない本を見つけた。


 いつのものか、そもそもうちの学校のものか、私にはそれを調べる責任がある。


 裏表紙に、管理用のバーコードは貼られていない。背表紙には図書の分類番号が貼ってある。分類番号が書かれたシールの一番下にはちゃんと学校の名前も印刷されていた。


 間違いなく、うちの学校のものね。


 バーコードの貼られていない裏表紙、それをドキドキしながらめくる。


 バカね。何をドキドキしてるの。もうあんなもの、挟み込まれてるわけないのに。


 そんな風に自分で自分に言い聞かせながら、それでもやっぱり高鳴る胸を抑えられずに、裏表紙をめくった。


 あぁ。まさか今更、これを見ることができるなんて。


 あまりの懐かしさに、ほんの少しだけ泣きそうになりながら、裏表紙の内側に挟まれた貸出カードを手に取る。


 今はもう使われることのない貸出カード。それを使っていた中学二年の私は、今以上にドキドキしながら日々を送っていた。

 

 私の人生で、あんなに胸を躍らせた時はない。

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