仙術の書 2 『🧬仙術学園おづぬ』
ぢんぞう
大天狗 二郎坊
第1話「白血病」
飛鳥時代、病気治しの達人がいた。
遣隋使で大陸に渡り、密教の秘法『
👺👺👺
バキッ!
秋、北海道の山の中で”ひょうたん“が割れた。
ひょうたんの中から何かが出てきた。
半透明などろっとした物だ。
それは、徐々に大きくなり半日ほどで人の形になった。
「やれやれ、おづぬに封印されたのか。100年くらいはたったのかな? なんだ、このガリガリの体は?
『オン アロマヤ テング スマンキ ソワカ』
「仮面!」
男が真言を唱えると、空間から仮面が現れた。
長い鼻の赤い仮面である。
その仮面をかぶると、背中に大きな羽根が生えて体も大きくなった。
裸で羽根をばたつかせる男。
「服!」
男が叫ぶと空間から山伏の装束が現れた。
山伏の姿で赤い仮面をつけて背中の羽根をゆっくり動かした。
徐々に浮かび上がって下を見る。
「山の中に封印されていたのか……よ〜〜し、行くか!」
男が大きく羽根を動かした。
「ぐあっ! ぁぁぁ……背中が、背中が……痛い、痛い、痛い!!」
背中の筋肉が固まって動かない!
こむら返りのように男の背中の筋肉は引きつって動かなくなった。
「まずい! 動けん!」
男は空高く飛び上がったものの、動けなくなり落下した。
🍜🍜🍜
「二郎ちゃん。巨大化してもいいんだよ」
「お前如き、このままで十分だ! オレの
男は鉄の金剛杖を凄い勢いで振り回している。
「八大天狗の内、七人はすでに封印した。
「なに? 七人の大天狗を倒しただと? 日様もか……」
「お前ら魔物は再生力が強くて、殺すのが難しいから“ひょうたん”に封印してやった。お前もひょうたんの中で気の固まりとなって眠っていろ!」
「お前が『おづぬ』だな! 妙な術を使う仙人が魔物を退治していると言う噂は耳にしている……」
「いかにも、我が名はおづぬ。わしの仙術は、まだ負けたことがない。お前のような化け物でも封印してやるぞ!」
「非力な仙人が、オレを封印すると言うのか? おかしくてへそで茶を沸かすわ」
「たしかに、力では、大天狗にはかなわないが、我が仙術は無敵である!」
「仙術など使う前に、その首を落としてやる!」
大天狗は金剛杖を振り回し、おづぬに突進した。
「オン マユラキランテイ ソワカ! 球電の術!」
おづぬは大天狗を包み込む電気の玉を二郎坊にぶつけた。
青白い電気に包まれた二郎坊は筋肉が収縮して動きが止まった。
「
さらに大天狗を縛り付けるおづぬの術で動けなくなった。
「お〜い、普通に戦え! こんな術は卑怯だぞ、おづぬ〜〜っ!!」
「お父さん、目をさました!」
少女が叫ぶ。
男が目を覚ますと見知らぬ家で寝ていた。
「あんた、森の中で倒れていぞ。修験道の人かい? このへんじゃ見かけないけど修行中なのかな?」
男は、天狗の赤い仮面が取れて人間の顔になっている。山伏姿で身長は170cmくらいで50歳代の普通のおじさんである。
「体が弱ってるみたいだけど救急車呼んだほうがいいかい?」
「きゅうきゅうしゃ?」
「病院行かなくて大丈夫かい?」
「びょういん?」
(あたまが混乱してるのか? 修行中なら病院代も持ってないか……行者さんなら家にしばらく置いても悪さはしないだろう……)
少女の父親は森で倒れていた男を家に連れて帰ったが、見慣れない山伏姿の男性だが修行中に倒れたのだと思った。
少女の父親は、とても信心深い人で山伏姿の人をほおってはおけなかったのだ。
「おじさん誰?」
「オレか? オレは大天狗様だ!」
「アハハハハハ、大天狗様! 面白い。テレビで見たことある!」
少女は山伏姿の男に興味があるようだ。
「体力が戻るまで家に居てもいいけど、本当に救急車呼んだほうがいいんじゃないかい?」
「きゅうきゅうしゃというのはわからんが、これくらいの傷は寝てれば治る」
「そうかい、具合が悪くなったら言ってくれよ」
少女の父親は山で『いたや食堂』と言う定食屋をしていた。
山の中だが国道の走っている道にある店なので、そこそこ繁盛していた。特に味噌ラーメンが美味いとトラックドライバー達が言っていて、わざわざ遠くから味噌ラーメンだけを食べに来る人もいるくらいだった。
少女の父親は男に食事も出してくれた。
「これは
「これは味噌ラーメンだよ」
じーっと味噌ラーメンを見ている男。
「おじさん、遠慮しないで食べてよ。お父さんの作る味噌ラーメンは美味しいんだから!」
少女が食べるよう勧めるが、男はじーっと見てるだけで動かない。
「食べたいんだが……両手が動かないんだ……」
「それじゃー、あたしが食べさせてあげる」
少女は寝ている男の体を起こし味噌ラーメンを食べさせた。
男は自力で食事も取れないほど弱っていた。封印されていたので体もガリガリである。落下の衝撃で骨も何ヶ所か折れているようだ。
「旨いな! 汁も旨いが、このシャキシャキした白い野菜と肉の小間切れが絶妙だ!」
「これはモヤシと豚のひき肉だよ。お父さんの味噌ラーメンは皆んな美味しいって言ってくれるの」
「味噌ラーメンって言うのか、大陸の料理みたいだな」
「大陸? 大陸って南極?」
「大陸から帰ってきた
「南極の料理人かな? 前に映画があったね。ぶっせんってわかんないけど、お菓子かなにか?」
「仏仙は仏教を修行して仙人になった奴だ。法力で物を動かしたり病人を治したりする」
「へ〜〜っ、そんな人がいるの!? それなら、あたしの病気も治してくれないかな……」
「なんだ、お前、病気なのか? 元気そうじゃないか」
「いまは、まだ元気なんだけどね、ドナーが見つからないと死んじゃうかもしれないんだって」
「どな〜?」
「あたし、白血病なの」
「はっけつ?
「バカ! おやじギャグ!」
少女は味噌ラーメンを食べさせながら、男の背中を軽く叩いた。
「血液のがんなんだって」
「がん?」
「ドナーが現れて血を入れ替えたら治るかもしれないって言ってた」
「血を入れ替えて治るなら、オレの血をやるぞ。もう少しして元気になれば、お前の小さな体になら多少の血をやっても大丈夫だろう」
「ありがとう。でも型が適合しないとダメなんだ」
「なんだ、血に型があるのか?」
「いっぱいあるんだって。一致する型の人から骨髄にある血をもらえれば、あたしは生きられるかもしれないの……」
「もらえなかったら、どうなるんだ?」
「その時は、徐々に免疫がなくなって死んじゃうんだって」
「めんえき? その“めんえき”という物があればいいのか?」
「うん、免疫があればね……」
「よ〜〜し、オレ様は、この土地神の大天狗様だ! 手に入らない物などない! そのめんえきとやらを持って来てやる!」
「はははははははっ、免疫は物じゃないよ。体の中にあるの……でも、ありがとう。嬉しいよ」
少女は腹を抱えて笑っている。
体の中にある物?
あの仏仙の法力なら、この病いを治せるんじゃないか? あいつ、どこかにいないかな?
📜📜📜 天狗のひとくちメモ。
一般に赤い顔の天狗を鼻高天狗と言いますが、この作品では赤天狗と表記しています。
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