神さま

色素の抜けてしまった細い毛先が日光に透けると、わたしはこの人が神様だったのだと確かに信じられた


路上で潰れてしまった足を自覚した地獄のような絶叫

コラージュ 衝撃波による断片

わたしは偶然にもその日 初めて歩道側を歩いていた


植物のような

餓鬼のような

深夜のような


悪戯で

無神経で

精密な


私の神様が欠損した

ああ、容易かった



切り落とされた片足の在処が知りたい、塩素のしみ込んだ薄い小麦の皮膚 きっとひんやりと神聖な水分の


幸い私にも病名がついた

アルファベットを並べ替えた自己理解の放棄

ほとんど後付けになった馴れ初めから 路上の血痕までの美術


腐った水着

ぬめる床

合法的ロマン


軽率な謝罪

絶対的なかた結び

美しそうに眺める群れ


未曽有のウイルスに侵された青春の時

お前たちは あの時も!



不器用で温かみが地下に抜け落ちていただけだと、わかっていたながらにわたしはそいつを殴りとばした


思ったより傷ついている

恥ずかしげもなく刺さった両足の無様

いつでも泣き出せる顔の熱さと 買い替えなかった学ランの擦れ


言葉に出る洗脳

虚辞の甲冑

可哀そうなあの人


体毛に癒着し

皮膚を巻き込み

それは真実になって


私の神様が欠損した

ああ、容易かった!

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