あの空に、共に行けたなら。

COTOKITI

第1話 彼女が初めて足を止めた日


少女は決して足を止めない。


荒れ果てた都市を何処までも歩き続ける。


何故なら足を止めろという命令は誰からも発せられていないから。


最後に聞いた命令はただ一つ。


『何処までも歩け、そして止まりたい時に止まれ』


アンドロイドである彼女は嘗てのオーナーの命令を忠実に実行していた。


しかし、自由を初めて貰った彼女はいつ止まればいいのか分からない。


だからこうして歩き続けているのだ。


彼女は歩きながら、30日毎に定期的に行っている自分のボディの診断を行う。


……診断完了


……ボディ劣化率:67%


……稼働限界まで残り『000071時間』


何年も歩いている内に、嘗ては美しかった見た目も度重なる豪雨や砂嵐などによって変わり果て、あちこちの人工皮膚が剥がれ中の部品が剥き出しになっていた。


この71時間が過ぎれば、自分は壊れる。


それを知っても尚彼女に足を止める理由が無かった。


2日歩き続けた後に、ある場所に辿り着き、と出会うまでは。


==========




《やア、こんニチハォ嬢さん。今日もいい天気だネ》


彼女が初めて足を止めたのは嘗て人類の軍隊と呼ばれる組織が大型のUAV無人戦闘攻撃機を飛ばすのに使っていた飛行場だった。


そして何より彼女の目を引いたのはそこの格納庫に居座るたった一機の無人戦闘機。


気さくな挨拶を投げ掛けてくるそのUAVに彼女は困惑する。


この時初めて、彼女はあのオーナーの命令を完遂したのだ。


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