聖女様を護り隊! 〜女子校に降り立った女神は異世界転生してきた聖女様でした〜

ソラノ ヒナ

第1話

「おはようございます」


 あぁっ!!

 今日も素敵!!!


「「「おはようございます、聖女様!」」」


 聖女様の登場に、教室の温度が一気に急上昇した。だって聖女様が微笑んだから。仕方ないよね。毎日が真夏の野外フェスみたいなもんだし。


 でも、女子校でよかった。男子がいたら絶対に、聖女様はすぐに食べられているだろうし。

 素晴らしきかな、同性という立場!


 どんな場所へでもお供します!!

 移動教室も、職員室も、トイレの個室の中も、着替えは手取り足取り、何でもお任せあれ!


 今日も今日とて、クラスのみんなが魅了された瞬間、自分の席に歩き始めたセーラー服姿の聖女様の眉間にしわが寄った。


 本日もお肌が真珠のように白く輝いている。

 身長は一六四センチ。体重は五六.四キロ。この前無理やり抱き上げたから、その時の重さは間違いない。すらりとした体型。バストサイズはDだ。この前無理やり抱き上げた時、たまたま触れたからわかる。うそだ。積極的に確認したからわかる。

 目は慈悲しか感じさせない垂れ目。力を使う時だけ凛々しくなるのがもう、たまらない。

 そして前髪は真っ直ぐそろっていて、超ロングの黒髪。長さが足首まであるとか、ある意味、背中から聖女様を守る美しい盾だ。ちなみにしっとりサラサラ、甘さと柑橘系が混ざり合った、とても良い匂いがする。


「聖女と呼ばないで下さい。何度も言いますが、私の名前はひじり乙女おとめです。聖女だということは家族以外、ここだけの秘密ですから」


 そうなのだ。

 聖女様はあたし達を信じて、打ち明けてくれたんだ。

 異世界転生してきちゃったってことを。


「そうですよね? 護神ごうじんさん」

「そうですね。でもあたしの名前、教えましたよね? ちゃんと呼んで下さい」


 隣の席を与えらし者の特権。こんなに間近で聖女様の体温を感じられる、最高の場所。ほら、触れなくても温もりって伝わるから。

 それに、きゅっと引き締まった小さな口を、あたしのためだけに開かせる。朝からなんて素晴らしい光景なんだろう。


祐奈ゆうな……ちゃん?」

「正解です、乙女ちゃん」


 かわっ!!!

 毎回照れてるの、かわっ!!

 頬染めて首傾げるとか二次元じゃん!

 まさか三次元に存在するなんてサイコー!!!


「あっ、また鼻血が……」

「すみません。今日もお願いします」

「任せて下さい!」


 今日も良い仕事したな!!


 自分の鼻をほめれば、聖女様の神聖な手が触れてきた。あ、鼻血追加で。


「痛いの痛いの、飛んでいけー!」


 今日も聖女様は可愛い!

 

 呪文と共に白い光が現れる。すると、鼻の違和感もなくなる。奇跡の力がここに!

 でも、誰にも言わないって誓った。クラスのみんなで誓い合った。話し合いがだめならと思って、体を張った甲斐がある。みんな高速首振り赤べこみたいになってたし。


 あたしは一八〇センチある。空手黒帯。蹴りで電柱倒せる。髪も短いから、男に間違われることもある。

 そんなあたしがずっとそばにいれば、護衛になるし。

 これが自然にそばにいる方法。賢いぞ、あたし!


 だけどあたしが武力を示さなくても、聖女様は慕われている。

 そう、あれは転校初日だった。とか回想文句を頭の中で言いながら、三か月前の四月十五日を思い出してみた。

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