第6話 ダンジョン攻略のための掲示板
『なんか新しいスレ立ってるけど』
『ついに万策尽きたくさくねw』
『でもちょっと楽しそうかも』
『スライム! 服だけ溶かすスライムでクレナイを罠にハメてほしい!』
『ここはやっぱ強力なモンスターでしょ』
『なんかおもしろいのできたら起こして』
『まずダンジョンというなら、協力プレイが必須……その上でパーティーメンバーをダンジョン内でバラバラにするようなトラップを仕掛けて、各個強力なモンスターとぶつければ盛り上がると思います。クレナイは基本ソロプレイのようですからクレナイ本人を倒すのは難しいにしても、他のパーティーメンバーをピンチにしてダンジョンをクリアできるかできないかぎりぎりなところを観察するというのが効率的な方法だと思われます』
『ガチめのやついるんだけどw』
『まあおもしろければなんでもいくね』
『それを考えてるじゃん?』
『てかダンジョン博士どれだけクレナイのこと注目してんだよ、もはや好きだろw』
「はぁ!? 好きじゃねえし! あんなかわいげのない女好きになる要素がねえし!」
翌日、立てた掲示板に書き込まれたコメントを見て、俺はそれらに対していろいろな感想を抱いていた。
なかなか協力してくれない者、面白半分で見ているだけの者、わりと詳細まで考えてくれている人。
それらを見て、俺は考える。クレナイをぎゃふんと言わせるものが、このコメントの中にないか。なんかこう、素晴らしい意見が眠っていないか。
目を凝らして、よく見る。
「ははぁ、ほとんどが適当なコメントばかりですねぇ。
まあ、掲示板なんてほとんどがこんなもんですし」
「だが、それだけみんなこの掲示板に興味は持ってくれたということでもある」
「っても、中には否定的なコメントもありますけどねぇ」
『クレナイ様は最強、お前ごときがなにをしても変わらない』
『あの高潔なお方を穢すなんてとんでもない』
『別にクレナイが失敗するとこは望んでない』
ラビが指さす先には、この掲示板タイトルに対しての、否定的な意見。
クレナイをどうにかして止めたい俺に対して、クレナイが止まるところなんて見たくない、という勢も存在するのだ。
なぜ、とは思った。だが、十人十色という言葉があるように、人間は一人一人感性が違う。
俺と同じ感性の人間は、多くはない……いや、いないだろう。誰も、本気でクレナイをどうにかしようと考えているやつは、いないのかもしれない。
それに、こいつらは動画視聴者。視聴者にとって、ダンジョンに挑む冒険者が負け続けるよりも、華麗に勝っていく姿を望んでいる者が多いのではないか。
「ま、そんなの関係ないねっ」
「ないんすか」
「元々俺は、ダンジョン創作の力を女神さまから貰ったんだ。配信機能は、いわばそのおまけみたいなもん。
視聴者の意見がなんだって、俺は俺の満足するダンジョンを作り続ける! へへへ……」
「この掲示板の意味半分くらいなくなりませんそしたら」
それにしても……クレナイをなんとかしたいがために掲示板にスレッドを立てたが、こう、ビビッとくるものがないなぁ。
どれもこれも、ありきたりというか、一度は考えたことがあったり、試したことのあるものばかりだし。
「あ、これとかいいんじゃないすか」
「ん?」
俺と共に、掲示板を見ていたラビ。声を上げて、ある一文を指すので、俺の視線もそちらへと向く。
そこに書かれていたものは……
『ダンジョン内で能力値の一定ダウン』
「ふむ……」
なるほどなるほど、能力値のダウンか……
ここでいう能力値とは、ステータスがどうとかレベルがどうとか、ゲームの中によくあるあれではない。単純に身体能力のことだ。
ま、向こうで見ているやつらには、なにが本当かなんてわからないから、どういう意味で能力値と書いたのかわからないが。
なんにせよ、これは悪くない案に思えた。いや、むしろかなりいい、か……
これまでは、ダンジョン内の道を複雑にしたり、強力なモンスターを配置したり、トラップを張りめぐらせたり……外的要因を、いろいろいじってきた。
だが、ダンジョンに挑む冒険者自身をどうこう、というのは、考えたことがなかったな。
「ダンジョンに足を踏み入れる……すると、冒険者には一定の負荷がかかるようにする……
ゲームで言うとそうだな、レベル90とレベル60の冒険者がダンジョン内では、どちらもレベル50に固定されてしまう、みたいな……」
「主様?」
「これはゲームじゃないし、レベルなんてものはないから……単純に、倦怠感? いや、重力負荷で冒険者の身体能力に負荷を与えるか……」
うん、うん。これは面白い試みかもしれない。
クレナイの身体能力は、すさまじいものだ。それが制限された時、頼りになるのは冒険者としての勘や、経験値だ。
あとは、これをどうやって、どういう風にしてダンジョンに取り入れるかだが……
「主様ー……あー、完全に自分の世界に入っちゃったっすねぇ。こうなると他のことは耳に入らないんすから」
「ぶつぶつぶつ……」
「ま、いいっすけど。また面白いもの見せてくださいね、主様」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます