第46話 逆襲 参
陽菜の心は摘んだ。
しばらくの間はほっといても大丈夫そう。
となると、そろそろ復活してくるであろう、男。
『蒼汰』
陽菜同様に、実に色々なことをしていたようだった。
やっていることはただの犯罪者と何ら変わらない。
権力に守られていた、力だけが取り柄のクズ野郎。
「.......」
ドスッ。
鈍い音。
股間に更なる追撃をかまし、悶えているところ落ちている縄で足を縛る。
両手を縛る。
拘束は完璧。
「ここまでが計画。……ほんとはここまでで終わらせるつもりだった」
七海が関わっていなかったら、の話。
どちらにせよ、コイツらには行くところまで行かせるつもりだけど、これから蒼汰にするであろう暴行はいらなかった。
でも、少しでも確率を上げておきたい。
「こっからは私刑。俺が鬱憤をはらすだけの時間」
ということにしておく。
近くに転がっていたバットを持ち、思いっきり振りかぶる。
狙いはまたまた股間。
よいしょっ!!!!
「……っ!!!!!! あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
この薄汚いもので七海を.....。
いや、もっと被害者はいるのかもしれない。
いずれにせよ。
ーーーーーーーこんなものは要らない。
「こんなもんじゃ終わんないよ」
「っ!!!! っ!!!? っ!!!!!!!」
何度も何度も執拗に潰す。
全然関係ないけど、性犯罪は再犯が最も多い犯罪らしい。
股間を潰すとか、そういう刑にすれば再犯も出来なくなるのにな。
「顔もいっとこうか」
とは言ったものの。
バットで人の顔を殴ったことがないから、どの程度なのか。
さすがに殺してしまうのはまずい。
後頭部は避けて.....と。
「がべっ!!!」
「すぐ気絶されちゃつまんないからね。手加減しなきゃな」
すると。
「……っ!! ………く……そ……。てめぇ殺………す」
おぉ〜〜。
陽菜とは違い。
さすがに打たれ強い。
まだこっちに歯向かう意志というか、そういうものがある事が驚きだ。
「あの………、状況分かってる?」
「…………!」
「正当防衛の証拠は撮った。社会的に死ぬのはお前。俺も完全にお咎めなしとまではいけないだろうけど…………。お前らをボコれたら……それで良いかなって」
これも方便。
ボコるのにはちゃんとした理由がある。
大丈夫、冷静に。
俺はあくまでも冷静だ。
「ぐふぅっ………!!」
コツを掴んできた。
脳挫傷させることなく人の頭を強打するには、頭に対して垂直に振り下ろせばいいのか。
「お前らがやったこと、全部返したいんだけど。どうしようかな…………」
目を見開く蒼汰。
ダラダラと頭部の裂傷から流れる血液が痛々しいが、まぁ、お似合いかな、とも思う。
「…………!!」
七海が受けた苦痛。
それは非常に大きい。
これからの日常生活に影響が出るのは確実。
それをコイツにちゃんと返すには.....。
「半分は社会的な死。もう半分は物理的な死……。いや、半分の物理的な死なんて実現不可能……か。じゃあ、人生……?」
社会的に死ぬのは確定事項。
であれば、やっぱり七海と同じく不自由な生活を送ることを強要するのが自然。
「お前が生きる残りの人生をもらおう! そうだ、それがいい!!」
「.....!」
ーーーーーー今日の俺は、冴えてる。
「脊髄って、知ってる?」
「人間の背骨に守られている中枢神経なんだけどさ」
「ここを傷つけられると、最悪の場合歩けなくなっちゃったりするんだよね」
「だから」
「ちょっと背中。貸して」
「や………やめ…………」
「七海も何回もやめて、と言っただろうね、多分。…………でも、お前たちはやめた?」
「人からやられて嫌なことは、他人にしちゃダメなんだよ」
やるならば、自分がやられる覚悟をもたないと、ってね。
それがないなら、大人しく家でゴロゴロしているのがいいさ。
非行を行うのは自由だけど、裁かれる義務を伴うから気をつけようね。
「そう、小学校の道徳で俺は習った」
背中のど真ん中に向けて、バットを振り下ろす。
「っ………あああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
脊髄がどこにあるのかなんて分からない。
バットで損傷させられるのかも分からない。
ただただ。
俺は手に残る鈍い感触が不快で不快でたまらなかった。
「っ…………!!!!! ………っ!!!」
それでも、俺はバットを振り続けなければならない。
陽菜にも、蒼汰にも、必要なのは『どうしようも無い絶望』を体感させること。
次はーーーーーーーーー。
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