第42話 「再会」
頭の中で蘇る、あの日々。
共に青春を過ごした1年間。
初めて話した日。
くだらないことで笑う笑顔。
一緒にたむろったファミレス。
相談を受けた夏の放課後。
そして。
―――――――あの日、最後に交わした言葉の数々。
「七……海…………?」
いやいや。
待てよ。
そんなわけないだろ。
次々に頭に浮かぶ映像、言葉、瞬間。
『最近女拉致って遊んでいる、らしい』
金髪が言っていたこと。
『七海ちゃんがいなくなったらしいの』
ファミレスで聞いた雅の言葉。
繋がって欲しくない点と点が線で繋がる。
そんなことは有り得ないと、どこか心の中で決めつけていた。
この一件と彼女が関わることがないと。
関わりなんてあるはずがないと。
なのに。
「さ…さ……きく…」
「……………!」
手首を縛っていた縄が切れた。
同時に倒れ込んでくるのを、両手で抱きとめた。
「たす……け……」
ーーーーーーー七海。
七海、なのか。
本当に。
「七海………」
すると、閉じ気味だった目がゆっくりと見開かれた。
「佐々木……くん」
「七海っ、大丈夫……!?」
大丈夫でないのは明白だ。
でも、それでもーーーーー。
「…………!」
動転している。
頭が回らない。
正常な思考ができない。
「スマ……ホ…」
なんだ……?
……スマホ?
「スマホが、どうした?」
ポケットに手を突っ込む。
しかし、普段はあるべき所にスマホがない。
……なんで?
しばしの間ガサゴソと制服をまさぐり、ようやく気付いた。
何やってんだ、俺。
ココじゃん。
ーーーーーー首筋。
今日のために制服を改造し、首筋のカラーから撮影ができるようにした。
正当防衛の証拠。
反撃する以上、どうしてもそれが必要だった。
重ねて、監禁されている状況をカメラに収めることが出来れば、裁判で有利に働くーーーーーー。
「七海、スマホ……! ……ココにある…!」
急いで制服を脱ぎ、首筋に括りつけたスマホを無理やり外し、七海の前にかざした。
「あり……がと」
「…………何に使うんだ……?」
「佐々木……君」
「ごめんね」
言うが早く。
七海は俺のスマホを掴み。
「え………」
ドアの向こう側に向かって、投げた。
重ねて言う。
動転していた。
それ故に、正常な思考ができなかった。
俺は考えが及ばなかった。
七海が俺の味方だと、なんで言いきれるんだ。
ーーーーー無意識の内に可能性を1つ消してしまっていた。
ドアの向こう側。
そこにはつまり、さっき騙し討ちした颯汰と。
塚原陽菜がいるわけで。
「……なん…で?」
カラカラと音を立てて、陽菜の前に俺のスマホが転がった。
「ありがと、七海」
無意識の内に消してしまった可能性、それは。
ーーーーーーー七海が、陽菜側の人間であるということ。
陽菜は俺のスマホを拾い上げ、見たことないほど醜悪な笑みを浮かべた。
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