第16話 終わる日常

 



「いって!」


 翌日。

 靴に画鋲が入っていた。





「.........」


 教室に行くと、机が無かった。(中庭に捨てられてました)






「ぶっ」


 バシャっ


 昼休憩前、なぜか知らないけど唐突にクラスの女子に水をかけられた。



 おいおい。

 急に本気出しすぎじゃね?


「ちょっとツラ貸せよ」


 水をかけた女子が俺のブレザーの襟首を掴み、そのまま体育館裏に連行。



 ガシャン!と力任せにフェンスに叩きつけられた。



「.........!」



 いつの間に増えたのか、眼前には3人の女子がいた。

 どの顔も俺は覚えている。

 1人は真壁愛美。陽菜の金魚の糞で陽菜を病的なまでに崇拝している変態。

 俺に水をかけ、ここまで連行しフェンスに叩きつけたこの女は原田杏。空手だかやってて普通に大会とかでも優勝とかしている。

 ラス1。派手な金髪は雅を彷彿とさせる。典型的なギャル。道枝楓。


 どいつもこいつも.....。

 そんなに塚原陽菜という女が好きかね。

 なるほど。

 コレが昨日陽菜が言ってたか。

 予想こそついていたけど、なかなか強硬手段だ。


「てめぇ、いい加減にしろよ」


「.......? なんの事?」


「陽菜ちゃんに学校来んなって言われたろ!?」


「.....? なんの事か.....」


「とぼけんなよ!」


 再度フェンスに押し付けられる。


「陽菜ちゃんだけじゃない。皆アンタの事が嫌いなのよ。不快なの」



「それは.....ごめん」


「謝罪なんて要らないんだよ!」


「うっ.....!」


 脇腹のボディーブロー.....!!

 この猿女、力技すぎだろ。

 クソ痛えし!!


 でもここはあくまでも我慢。

 もうだ。


「ゴホッガハッ.....!」


「誠・意・を・見・せ・な・さ・い・よ・」


 悶絶しててよく分からないが、真壁の口からそんな言葉が聞こえた。

 どこかで聞いたような言葉。

 どこだ.....?



 .........あぁ、そうだ。

 陽菜が言ってたことだ。


 誠意を見せる。

 恐らく。

 コレが陽菜のやり方だ。

 彼女は王だ。

 周りにいる配下を従えるために、自分への忠誠を確かめるために。



「誠意を見せて」というのだろう。



 言われた人間は、きっと彼女のために頑張ろうとする。

 今のコイツらみたいに。

 それこそ手段すら選ばずに。



 もう呪いだ。



 可哀想になる。



 1番可哀想なのは、その事実をコイツらが自覚していないこと———————。




「分かった.....! もう学校へは来ない.....」


 コイツらが欲しい言葉を吐く。



 ————————今日だ。



 俺が、お前らを塚原陽菜から解放する。





 お前らの日常と引き換えに。




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