白黒模様

そうざ

Black and White State

 或る日、黒族の村に白子が誕生した。

 有史以来、このような怪事件は類例がない。

 何か良からぬ厄災の前触れではないのか――言い知れぬ不安に駆られた黒族は、神に祈りを捧げた。彼等にとっての唯一神である。

 すると、白子は大いなる神の力で天の彼方へと消し飛ばされた。不安の種が取り除かれ、村に平穏な日々が戻った。


 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、また白子が生まれた。次々に生まれた。

 うかうかしていると村は白子で溢れてしまうのではないか――慌てふためいた黒族が再び神に祈りを捧げると、白子は次々に天に消え去った。


 ところが、その後も白子は生まれ続けた。もう神への祈りも追い付かない。気が付けば、村人の半分以上が白子に入れ代わっていた。

 やがて、黒族の中から白族へと転向する者が現れ始めた。逸早く多勢に無勢を見極めた者達である。

 黒族は減り続けた。

 白子は増え続けた。

 白子は白族として幅を利かせるようになった。これではもう黒族の村とは言えない。

 戦々恐々、一触即発、互いを疎み、呪い、村の所有権を主張した。しかし、既に雌雄は決せられているも同然だった。

 僅かに生き残った黒族は、自らの滅亡を予感しつつも神に祈り続ける事しか出来なかった。


 その時、人智を遥かに超えた神の御業が村全体を包んだ。

 黒族も白族も互いの姿に目を見張った。皆の体が鮮やかな金色に輝いていたのである。

 何はともあれ、今や共に金族へと生まれ変わった彼等の間にもう争いの種は存在しなかった。

 こうして、村に平穏な日々が戻った。



 だが、神自身は周囲から冷やかされていた。


 ――お祖父ちゃんったら年甲斐もなく色気付いて、髪を派手に染めちゃってさぁ~――

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白黒模様 そうざ @so-za

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