モテるあたしと興味ないあの娘

シィータソルト

モテるあたしと興味ないあの娘

 あたし、北斗は自分で言うのもなんだが、大変モテる。だが同性からである。今日も告白された。だけど断った。あたしは同性愛に偏見がないので、モテる分には構わないのだが……。というかあたしも同性が好きなのである。恋している相手はいるのだが、その相手は恋愛に興味がない。何でも、相手に好みの相手は?って気軽に聞ける程の仲なので聞いてみたのだが、仙人みたいな悟りを開いて達観した人が好きらしい。つまり、欲がない人じゃね? 恋愛なんて煩悩だらけのものなのに。つまり、あたしに脈がないのか? 友達として好きという言葉も聞いたことない。あたしは友達に好き好きいうから軽いと思われているのだろうか。日本人は愛情表現が少ないというから、あたしなりに愛を伝えているのだが、ウザがられているのだろうか。淡泊なんだよなぁ。玲奈は。玲奈っていうのがそのあたしの好きな人に当たるわけで……。

 あたしと玲奈は幼馴染の腐れ縁である。保育園から、この高校までクラスがずっと一緒である。何をするにしても共にしている。倦怠期なのかな。常に一緒にいるとドキドキするということが起こらないのかな。いや、本人の言う通り、最初から恋愛対象として見られていないのだろう。一緒に少女漫画見て育ったのに、恋愛シーンでドキドキしなかったのかな。それとも照れ隠しなのかな。また、聞いてみるかな。玲奈の気持ち。告白をしても、変わらず幼馴染で親友してくれている玲奈に。


 放課後、あたしも玲奈も部活に所属していないから帰宅部。

「玲奈、一緒に帰ろう。今日あたしの家来ない?」

「北斗……別にいいけど。宿題一緒にやろうか」

「そ、そうだね。でも、いつもみたくお喋りもゲームもしようよ!」

「宿題が終わってからね」

 あたしの家に着いた。玲奈は近所なので、夜遅くまで遊べる。一緒に夜ご飯やお風呂だってする。今日は金曜日だから泊っていってもらおう。

「今日、金曜だから泊まっていきなよ!!」

「いいよ、宿題たくさん出てるし、一緒に勉強頑張ろう」

「お菓子とジュース取って来るから、ゆっくりしてて」

「うん、先に宿題進めている」

「……真面目ですこと……」

 真面目な幼馴染に、息抜きしてもらう為にお菓子とジュースの用意をしなくては!

 チョコがコーティングされたスナック菓子とオレンジジュースがあるな。これを持っていくか。両親は共働きだから、夜遅くに帰ってくる。だから、玲奈と二人きりを堪能できるんだ。と言っても、恋人同士じゃないからイチャイチャできないけどね!! あたしの一方通行の恋愛感情だけどね!! 何とか、進展が作れないものか……。階段を上りながら考えるあたし。

「玲奈~お菓子とジュース持ってきたよ~。息抜きしよ~」

「ありがとう、北斗。いいえ、まだ始めたばかりだから」

「玲奈はお堅いなぁ。アオハルしようぜ!!」

「アオハルって青春のこと? 学生の本分は勉強でしょ。青春しているじゃない」

「例えば、恋愛とかさ~。我々は高校生になったわけだけど、玲奈は気になる人とかできていないの?」

 玲奈が、勉強の手を止めてあたしの話に付き合ってくれる。

「私は昔から恋愛に興味ないから。でも、北斗といるの楽しいよ」

おっ!? 玲奈からあたしといると楽しいの言葉頂きました~!! 

「それは嬉しいなぁ……ねぇ、前に告白したの覚えている? 何で告白した後でも気まずくなく親友続けてくれてるの?」

「え……。気持ちに応えなくても友情は続けられるから。私は恋愛における行為に興味がないから……キスとか、体を重ねることとか……」

「一緒に少女漫画見て、ときめかなかったの!?」

「話しは面白かったけど、主人公に感情移入したことはないよ」

「嘘だろ!? 醍醐味を味わわずして何を楽しんでいたんだ!?」

「誰かと誰かが結ばれるのは喜ばしいことだと思ったけど、自分に重ねるということがないんだよね」

「えぇ~、キスしたらどういう気持ちになるんだろうとか、好きな人と体を重ねたらどれだけ幸せになれるだろうとか考えたことないの?」

「だから、それが興味ないんだって」

「誰かとそういうことをするって意識したことは?」

「ない」

「あたしに告白された時どう思った?」

「えぇ~何で私なんだろう、他に良い人たくさんいるのにもったいないと思った」

「本当、よく今も友情を保ってくれていて助かっているよ」

「どういたしまして。好意持たれていることは悪いことじゃないし。だけど、応えてあげられなくてごめんね」

「いや、あたしは玲奈のこと諦めたわけじゃないよ? 必ず振り向かせてみせる!!」

「私、前言った通り、仙人みたいに悟りを開いて達観している人だよ。好きになるの」

「それって欲をなくせってこと?」

「いや、私に対して何も要求してこないかなぁって。私もよくわからないけど」

「わからないのに、仙人みたいな人が好きってどういうことだ……学校の授業より難易度高いぞ……」

「いいから、宿題終わらせようよ」

「へーい」

 堂々巡りになりそうだから、とりあえず宿題を先に済ませることにした。


 十八時になり、二人で協力して宿題を片付けた。これならお泊りにしなくてもいいかもとも思ったが、二人きりになれる時間が増える。これは良い機会だ。あたしのこと意識させてやる。

「玲奈、一緒にお風呂入ろ!!」

「えぇ~狭くない? 一人ずつ入った方が良いんじゃない?」

「一緒に入りたいんだよ! 裸の付き合いで仲をもっと深めよう」

「まぁ、小さい頃から一緒に入っている仲だから気にしないけどさ……」

 玲奈は渋々後を付いてきて脱衣所に入る。よくお泊りしているので、玲奈の私物はある程度置いてある。だから、今日みたく急にお泊りになっても取りに帰ったりしなくていいのだ。パジャマを用意し、タオルを用意し、服を脱ぐ。あたしは、少しドキドキしているが、玲奈は冷静に脱いでいるんだろうな~。

 裸になった二人は浴室に入る。かけ湯をして、二人で体を洗い始める。

「玲奈、胸大きくなったんじゃない?」

「そう? 自分じゃわからない」

 玲奈は何と胸を手で持ち上げてまじまじと自分の胸を見ている。あたしから振っておいてなんだけど刺激が強すぎる……。

「その仕草、異性の前でやっちゃダメだからね!!」

「えぇ~しないよ。北斗の前だからしているんだよ」

こっちがえぇ!? だよ!! いきなり胸を持ち上げやがって!! 誘惑してんのか!?

「まったく、こっちの気も知らないでそういうことを平然と……!!」

「ジロジロ見ないで、恥ずかしいから……」

えぇ~、胸を持ち上げるという胸を強調をしたことは恥ずかしくなくて、ただ見られるのは恥ずかしいってどういうことだってばよ!? 恥ずかしいの基準おかしいだろ!!

「胸を強調したのはそっちが先だろ!! 意識しているの知っているくせに、そういうことしてあたしをからかうな!!」

「からかってなんかいないよ。ただ、大きくなったって言われたからどこが変わったかよく見てただけだよ」

「あたしの気持ち知っているくせに!! 触れたくなるだろ!?」

「私に触らないで。私が他人に触られること嫌っているの知っているでしょ?」

「ぐぬぬぬぬぬぬ、知っているけども!!!!!」

「北斗を苦しめちゃうなら、お風呂別々にすれば良かったね」

「そんなことはない!! またお風呂一緒に入れてあたしは嬉しい!!」

「そう……。じゃあ、我慢して」

「お預け~辛い!! 片思いって辛いよ!! 世の中のリア充呪ってやる!!」

「私は、恋人にはならないけど北斗のこと大切な親友だと思ってるよ……これじゃダメなの?」

「恋人という肩書も欲しいのですよ……」

あたしはシャワーを頭をかけて、シャンプーを泡立て始めた。玲奈にもかけてやり、同じくシャンプーを泡立てている。

「肩書なんて目に見えないものにこだわるの? 友愛ならあるじゃない」

「あたしは、玲奈に触れたいんだ~!!!!!」

シャワーを止めて、待っていた玲奈に再びシャワーする。玲奈の頭の泡を洗い流してやる。玲奈の髪は長くて綺麗だ。それ比べて、あたしは短髪のウルフカットだ。

「洗い流してくれてありがとう。じゃあ、一緒に浸かりましょうか」

「う、うん」

背の高い私から入り、その後に玲奈が入る。後ろから私がちゃっかり密着している状態なのだが、何も言わない玲奈。狭いから、密着して少しでも広くしてあげようという気遣いだと思っているのだろうか? それももちろんあるのだが、あたしは玲奈にくっつくための口実だ。

「……なぁ、玲奈」

「……何、北斗」

「やっぱり胸、大きくなっただろ?」

腕を回しているところが胸の下だからか感触がダイレクトに感じる。うん、前より質感が違う。

「北斗、前から言っているけど、回す腕がおっぱいのところなんだけど!! おっぱい持ちあがって痛いんだけど!!」

「おっぱい連呼するな!! エロい!! そしてごめん!!」

 ラッキースケベとはこういうことを言うのか。だが、これよくやる。部屋でも、ベッドに腰かけてお喋りしている時に、後ろからじゃれつくのだが、腕を回す。何も考えず腕を回すと胸の下にいく。ちょうど抱きしめやすい位置なんだよな。それで話してたら無意識に玲奈の胸を持ち上げているんだ。なんか腕重いなぁと思ったら胸が腕に乗っかっているんだよね。

「もう、確かに大きくなったかも。太ったから」

「えぇ、ウエストそんなに変わったように感じないけどな」

 あたしは、腕を腰回りにやる。

「ひゃ!? くすぐったいからやめて!!」

「わぁ、ごめん、元に戻すから!!」

 腕をお腹周りに戻す。再び無言になるあたし達。それにしても、胸の呼び方相変わらず、おっぱいなのか……。見た目みたいに幼いままなのか、わざと言っているのか……。いや、玲奈に限ってわざとはないな。真面目におっぱいって言っているんだな。

 そういや、外で玲奈のつけてたネックレスに見惚れて弄んでた時、あたしの手の甲が玲奈の胸に触れてて……

「おっぱい触らないで」

「触ってないから!! ネックレス見てただけ!!」

 って、言われたっけな。公共の場でも、おっぱいって言ってたな玲奈。


「玲奈、その……胸のこと、おっぱいって言うのやめた方がいいよ。危ない人寄ってくるから……」

「北斗の前でしか、おっぱいの話題しないからいいよ」

 これ、耐えろってことですか!? わかっててやっているのか!? わからん。幼馴染の腐れ縁でもわからないことはわからん!! あぁ、体温上がってきた!!

「のぼせそうだから上がろうか~!!」

「そうだね。上がろうか」

 玲奈が立ち上がり、あたしも後追い、脱衣所に来るとタオル渡してくれる。ヤベェ……胸の話をしたからか、目線がつい胸にいってしまう。でも、下着やパジャマがこれから隠してくれるからあたしの猛獣の部分が治まることだろう。


 台所に行き、水を飲もうとすると両親に鉢合わせた。

「あら、今日は玲奈ちゃんが泊まりに来てるのね。いらっしゃい。ゆっくりしていってね」

「はい、お邪魔してます。お水いただきますね」

「遠慮せず水分補給するのよ~。ご飯これから作るから、ゆっくりして待っててね」

「母さん、今日はあたしが作る。仕事で疲れているでしょ。ゆっくりしてて。玲奈はあたしの部屋でのんびりしててくれてていいから」

「えぇ~悪いよ。私も料理手伝うよ」

「玲奈は不器用じゃん。だから美味しく食べてくれればいいんだよ」

「わかった。じゃあ、漫画借りて読んでいるね」

さて、玲奈の胃袋を掴むか。じゃがいもが大好物だから、肉じゃがを作るとして、あとはお味噌汁、野菜炒め、鮭の塩麴焼きといったところか。和食が好きだから和食を作って喜ばせる。料理得意で良かった。これなら、嫁になってもやっていける。


 料理完成。あたしの部屋へあたしと玲奈の分の料理を運ぶ。

「お待たせ、ご飯できたよ」

「わぁ、肉じゃがじゃん!! 北斗、わかってる~!! いただきます!!」

 玲奈はあたしのお手製の肉じゃがに夢中だ。胃袋掴むのは簡単だけど、心は簡単にはいかないよな~。

「美味しい?」

「美味しいに決まってんじゃん!! 北斗、最高だよ!! 我が家の肉じゃがより美味しい!!」

「玲奈のお母様の味を越えている……だと!?」

「……うん? そうだね~お母さんのより北斗の味の方が好きかも」

はー!! 普段好きって言わない玲奈が好きって言った~!! だけど、それはあたしではない~。あくまであたしの肉じゃがの話。落ち着け、あたし。でも、あたしにも好きって言って欲しい~。片付けをして、また戻ってくる。今度は、ベッドに腰かける。玲奈に後ろからひっつく。くすぐったがりの玲奈だが、この方法なら引き剥がそうとはしない。お風呂の時と同じだ。慣れてくれたのかな?

「玲奈から好きって言ってもらえて作った甲斐がありました~。また、作る。毎日でも作る」

「毎日なら流石に飽きちゃうよ……いくら大好きでも……」

 今度は大好き出たよ~。でも、それはやっぱり対象は肉じゃが~。大好きなんて言われたら卒倒しちゃいそう~。やっぱり段階を踏んでまずは好きから言ってもらいたい。

「ねぇ、玲奈。あたしのことどう思ってる?」

「友達で親友で幼馴染」

「あたしのこと……好き?」

「……友達としてなら」

「何で、肉じゃがには好きや大好き言ってくれるのに、あたしには言ってくれないの? 好きって言って欲しいな~」

「……照れくさい。言わなくても一緒にいるじゃん」

「こういうことは、口に出して言わないと伝わらないものだよ」

「……好き、だよ」

 あたしは嬉しいって返事をしようとしたが、口がわなわなして動かなかった。顔が熱くなるのを感じる。赤くもなっているのだろうなぁ~。何という破壊力。当たって砕けた。何だか体がスライム状に溶けてしまいそうな気分だ。とろんと顔がにやける。

「……あたしも、玲奈のこと好きだよ! 大好き!」

「……ありがとう」

 あぁ、愛の告白ではないけども、友情の告白をされたことによって、あたしの理性を壊すには十分だった。

「玲奈……」

 気付いたら、玲奈を後ろへ倒し、ベッドと玲奈の間を抜け、玲奈の上に乗っかる。

「何してんの!? 北斗!!」

「もう我慢できない……嫌われてもいいから……玲奈とキスがしたい……」

 あたしは泣いていた。涙がぽたっ、ぽたっと玲奈の顔にかかる。玲奈はいつものように抵抗しない。そう、遊びに来た時、告白をした時からあたしは玲奈に襲いかかっているのだ。でも、いつもはひ弱なのに逃げる時は怪力にでもなったかのようにあたしに抵抗して帰るかお泊りしている時は寝る。今日も抵抗して寝られるだろうと思っていた。

「北斗……」

 あたしの名前を呼んで、目を閉じた。え!? これは、このまま流れに任せて口づけて良いということですか!? 玲奈さん!? 聞こうとしたけど野暮だ。このサインは玲奈なりのOKサインだと思う。今まで友情を壊さないでいてくれたことを感謝し、今日ついに一線を越える。あたしはゆっくり、顔を近づけて軽く玲奈の唇に自身のを重ねた。

 




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