◆偶然と/取り繕って/装って/言いたい言葉/また言えなくて

偶然と

取り繕って

装って

言いたい言葉

また言えなくて




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「やっほー、上川君?」

「最近、よく会いますね。バイト先でも、だけど」

「だって、私の家だし」

「以前は文芸部が忙しいって言っていたじゃないですか」

「あ、それは今もそうなんだけど……」

「何かあれば言ってくださいね。お世話になってるから、少しでも手伝えることがあれば協力しますから」

「あ、うん……それなら……」

「それじゃ、俺はこれで」


 ペコリを頭を下げ去って行く。のばしかけた手が、しゅんと落ちた。


「……瑛真ちゃん?」


 突然の声に、思わずビクンと体が震えた。


「お、音無ちゃん?!」

「……後悔したくないのなら、早めに行動した方が良いですからね」

「な、な、なんのこと?」

「だから、そういうところですよ」

「……」

「行動したか、行動しなかったか。結果はどうあれ、絶対、その差が大きいですからね」

「う、うん……分かっては、いるんだけれど……」


 あと一歩。もう一歩。

 その勇気が私には足りない。次は、次こそは、絶対に次は――。


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