人外なやつ
夜、暗闇の中でスマホを開きつつ缶コーラを開ける。
ビール?やだよ、だって苦いじゃん。
灯りは赤色のライトが周りにある。
完全に暗闇って訳じゃない。
スマホでなにを見るのかは分かる奴は分かる。
pixivで健全とは言い難いイラストを探すのが最近の趣味だ。
夜中のビルの屋上でこんなことやってるのは俺くらいだと思う。
チルい。
意味を間違っててもなんとなくチルい。
そんな時間ももうすぐ終わるだろう。
スマホをLIVEに切り替えつつ身だしなみをちょっと整える。
「はーい、始まりました!!人外チャンネルでーす!」
ちょっと寂しい。
それ以上に不安だし怖い。
それを紛らわすためのLIVE配信だ。
「今日のゲストはこちら!!」
画面の奥に視線を移す。
なにもいない。
コメントが荒れている。
なんなら誹謗中傷が当たり前のように飛んでくる。
厨二病乙 設定痛いww これオワコ
毎回CGだろ 演技乙 やり方雑ww
クソカスで草w パクりだろww
何もねぇぞ! そろそろ働け
もうちょっと工夫したらいいんじゃ
ダメダメで草wwww 底辺YouTuberだろ
とかね。
後ろで爆発音と間違うほどの大きい音がした。
いつも通り抜刀して構える。
「ではゲストを倒させてもらいます!」
見栄を張ったものの巻き上がった粉みたいなコンクリートであまり見えない。
そんな中で当然のように鋭い爪がこっちを狙って煙を裂いてくる。
頭を少し傾けると同時に刀を横に振る。
耳の横に風を切る音が通り過ぎる。
けど当たったようで極彩色の血が地面に落ちる。
更に同じ場所にそのままの勢いで縦に刀を叩きつける。
けどそこにもう肝心の″ゲスト″は居なくコンクリートを浅く斬った。
「また逃したわ~」
がっかりした感じのコメントも流れまくってる。
まぁそんなもんだろ。
硬いコンクリートに腰を下ろす。
「ではでは今日はここで終わろうと思います!ご視聴ありがとうございました!」
そう言ってLIVE配信を切った。
これはきつい。
すごいきつい。
上半身を倒して呼吸を整える。
なんせ化物相手、そう言う自分も化物ではあるんだけども。
ガチャッと後ろにあった屋上の扉が開く音がした。
入ってきたのはおっさんだった。
「「おぉ、珍しい」」
そんな感じで口から自然と出た言葉も被った。
先に話しかけてきたのはおっさんの方だった。
「こんなとこで何を?」
「夜空のLIVE配信やってます、今さっきおわったんっすよ。」
「横、失礼するよ」
おっさんは「どっこらせ」と言いながらきつそうに座った。
きっと座り方からして50~60歳って雰囲気を感じる。
手にはビールと煙草を持ってる。
「いるかい?」
「自分ビールも煙草も苦手っす、」
「ちょっと話そうよ」
おっさんは煙草に火をつけながらビールを開けた。
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