第15話
「とりあえず……もう死んでいるみたいね」
探にぶん殴られて派手に吹き飛んだピラニアジェネラルの骸の生死確認を終えた美香は安堵の息を吐く。
「部長……済まない」
魔物に殺された英里子の形見となってしまった彼女の武器・バトルハンマーに頭を下げ、手を合わせる。
(確かこのマヨイガでは命を落としても最寄りのセーフティールームに送り返されるはずですけど……気持ちの問題ですよね、先輩)
探の優しさに同調したエレミィと美香は英里子の形見に頭を下げ、手を合わせる。
「それで、人魚族の集落に向かう前に、アレはどうしましょう……? 放置しておくわけにもいきませんし」
エレミィはピラニアジェネラルを指さしつつ聞く。
「じゃあ私はアレを『アイテムスキャナー』で素材剥ぎ取り回収するんで……先輩はセーフティールームで待っている英里子ちゃんに連絡してもらえますか?」
「わかった……『部長、どこですか?』」
2人がマヨイガ探索者として各々のタスクを果たしているその時、遠くから微かに笛の音が聞こえる。
「これって笛……ですよね?」
「ああ、僕も聞こえた。まさか敵か?!」
「探様、大丈夫です! これは人魚族の呼子です!」
エレミィは首から紐で下げて胸の間に隠していた笛を取り出し、口に咥える。
「ピーッ! ピピッ! ピーッ!」
「ピッ! ピ! ピピピーッ!」
「やりましたよ探様! どうやら聞こえたみたいです! あと数分もたたずに助けが来ます!」
~数分後~
「姫様ぁぁぁ!」
「おおい、こっちよぉぉぉ!」
エレミィの呼子を聞きつけ、ハイドロフォイルで駆け付けた鎧と兜で人間上半身を防護する3人のマーマンにエレミィは喜んで手を振る。
「今助けますぞ!」「死ねぇ! ピラニア野郎!」
「へっ?」
『エレメントプラス・サンダー』
『ハイドロブリッジ!』
3人の持つ棍棒、槍、剣が電気を帯びると同時に、水の橋が出現。その上を滑走して一気にエレミィの頭上を越えた3人は、探と美香に斬りかかる。
「ぐぅっ!」
この強襲をどうにかエレメントプラス強化済みの武器で受け止めたものの、防ぎきれない電撃の痛みに2人は顔を歪める。
「おやめなさい! 無礼者! その方々は私の命の恩人なのですよ!」
「姫様!? あれ……よく見たら姫を襲おうとしたピラニアじゃないぞ? まさか、ミズノミヤ様が言っていたもののふ様なのか?」
「そうよ! すぐに武器を収めなさい!」
エレミィの厳しい声に3人はすぐに武器を下ろす。
「我らと共に戦うべく世界の壁を越えて参ってくださったもののふ様とは知らず……誠に申し訳ありません!」
薄暗い迷宮で視界が悪く、フードを被った二足歩行ビジュアルで勘違いした事による不幸な事故だとは言え、族長の妹であるエレミィ姫の命の恩人に斬りかかってしまった人魚族の戦士・マーマンウォーリアーは土下座して許しを請う。
「探様、恩を仇で返すような事になり……私からも申し訳ありません!」
「そっ、そんなエレミィちゃんまで……私、怒ってないから! 先輩もそうですよね?」
実際の所はサポートスキルで『属性ダメージ減少・中』を習得していなければ危なかったのだが、3人と並んで土下座するエレミィに美香は慌てて探に仲裁を求める。
「うっ、うん。僕もちょっとビリビリはしたけど気にしていないから……それよりマーマンさん、今ミズノミヤ様とか共に戦うって言っていたけど、どういう事かな?」
「……もののふ様はご存知ないと申すのでしょうか?」
「ご存知ない? いや、エレミィさんからデーモングッソー大量繁殖の話や水乃宮が今マヨイガの儀を出来ない事情とかは聞いてますけど……みずのみや様なんて人は知らないし、共闘とかってのは初耳なんです」
(おいおい、 どういうことだ?)
(まさかミズノミヤ様が虚偽を申している……のだろうか?)
(とにかく、我々の使命である姫の救出保護ともののふ様の捜索は終えた……と言う事でいいんだよな? そもそも、もののふ様方は3人じゃなかったか? 1人足りない気がするんだが。それって聞いても大丈夫なのか?)
(まあ、とりあえずそういう事にして……我らが村にご案内しよう)
ひそひそ話を終えたマーマンウォーリアー達は探と美香に向き直る。
「もののふ様方、この度は我らが姫のお命をお助けいただき誠に感謝しております。そして我らが主、マヨイガ五武神・ミズノミヤ様も村で皆様をお待ちになっております。正式な御礼も申し上げねばならないので是非とも我らとご同行願えますでしょうか?」
「五武神が待っているですって!? しかもミズノミヤ様って事は……」
「とりあえず行ってみよう。エレミィさんにマーマンさん、案内してもらえますか?」
「もちろんでございます! もののふ様方!」
【第16話に続く】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます