Episode:3 彼女の家で寝転んで(木々が風に揺れる音)②
「そんで、なんであんたは死にかけてたわけ?」
「……ふむ、ふむ」
「『仕事終わりに海を見に来たら、溺れている女の子がいたから慌てて助けに入った』」
「『確かに満月の晩だったかもしれない』……と」
「なるほどねー! あんた、意外と度胸あんじゃん」
「自分の命そっちのけで、他人を助けるなんて普通の人間ができることじゃないよ」
「正直、見直したわ」
「………」//主人公が首を振っているのを見守る間。
「謙遜すんなって! 胸張りなよ!」
「いろいろ摩訶不思議なことが起こって不安かもしれないけどさー。やっぱ人間、最終的には笑顔で前向きなのが一番だよ!」
「……つかさ、あんた出会った時から思ってたけどめちゃくちゃ疲れた顔してない?」
「クマとかまじやばいよ? 夜の海よりも黒いもん。ちゃんと寝てる?」
「それとも、寝れない事情があるとか?」
「……あっ、待って! 答えは言わないで! あたしが当てるから!」
「もしかしなくてもあんた、ブラック企業に勤めてるんでしょ!」//以下、楽しそうに
「終電での帰宅は当たり前……」
「他人の業務を押し付けられ、エナジードリンク片手になんとか頑張り……」
「それなのにパワハラ上司に毎朝毎夕、理不尽なことで怒鳴られる!」
「そんなクソヤバな社畜生活を送ってると、そう見たね!」
「このイサナちゃんの目はごまかせないよ!」//ここまで楽しそうに
「……えっ、待ってよ。なんで目が虚ろになってるの?」
「ちょっ、ちょっと! 半笑い怖すぎなんですけど!」
「まさか当たりなの? 噓でしょ~!」
「この前見たドラマの設定をそのまましゃべっただけなのに、本当にそんなことがあるなんて……恐るべし現代社会……」
「うーん。なんか冗談のつもりだったのに、ヘンなトラウマの扉を開いちゃったみたいでごめんね?」
「お詫びに……そうだなあ……あっ! あたしが耳かきしてあげるっていうのはどう?」
「これもドラマで見たんだけど、最近、癒やしって言えば、耳かきなんでしょ?」
「あたしが誠心誠意を込めてやってあげるよ」
「あんたがこの『ニライカナイ』に来たのは偶然だったかもしれないけどさ……」
「つらい社畜生活から解放されて、優しい神様から長いお休みをもらえたんだと思って」
「全力で癒やされに行こうぜっ!」
「……まっ、あたしも神様なんだけど! にゃははっ!」
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