Episode:2 彼女の家で寝転んで(木々が風に揺れる音)①
//ヤシの木々が風に揺れる音
//南国の鳥たちの鳴き声
//ブラウン管のテレビがブツッと切れる音
「やば~! 今日のドラマ、神回すぎ!」
「特に『赤いリップが気に食わない』って言った彼氏に、主人公の女の子がビンタを食らわせるとこ……」
「あたしが現世にいたころじゃありえなかった!」
「やっぱり女の子は自分の好きなお化粧してこそよね」
「胸がスッとすく思いだわ~……はぁ……最高……」
「……ってごめんごめん。自分からあんたを家に招いたっていうのに、ずっとほったらかしにしてたわ」
「『ドラマが好きなのか』って? うん!」
「特に好きなのは恋愛系かな」
「ほら神域にいると、刺激的なシチュエーションってまったくないからさ」
「せめてドラマでドキドキを摂取したくて、眷属たちに無理言って現世の電波が入るようにしてもらったんだ」
「だからあたしの言葉もめちゃくちゃイマドキなギャルでしょ? えへん♪」
「時々古い言葉遣いに感じる? そーなの? あんたが流行りに追いついてないだけじゃない?」
「見るからに小ダサいし。……なーんて冗談冗談」
「ほら、頭撫でてやるから拗ねんなって」
「よし……よし……」//たっぷり間をとってください
「うんうん、いい子だね」//優しく
「じゃあドラマも見終わったことだし、改めて自己紹介するね!……コホン!」
「あたしの名前はイサナ」
「これでもこの神域『ニライカナイ』を守る海の神様、
「まっ、神様らしいことは何ひとつしてないんだけどね!」
「ここって平和すぎて、良くも悪くも何も起こらないからさ」
「そんで、いまあんたがいるここ『ニライカナイ』は」
「『はるか海の彼方、現世と
「……って、杓子定規な説明されてピンとくる?」
「………」//主人公が首を振っているのを見守る間。
「にゃはは、だよねえ!」
「あたしも最初に来て教えてもらったときは全然なに言ってるかわからなかったもん!」
「まぁ要は普通の人間が生きてる場所でも、天国でも地獄でもない場所ですよーってこと」
「普段は誰も入ってこれない神域なんだけど、誰かが入ってくるにはみっつ条件があるの」
「ひとつめ。満月の晩であること」
「ふたつめ。神域を守る、あたしの神通力が弱まっていること」
「みっつめ。当事者が死にかけていること」
「あんたはみっつの条件を満たしちゃったみたいだね」
「いや~、こんなことなかなかないはずなんだけどな」
「まっ、来ちゃったもんは仕方ないよ」
「次の満月の晩にまた現世とのゲートが開くはずだから、それまでゆっくりしていきな」
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