百合の花よりも可憐な日常の

霜花 桔梗

第1話 キスからの始まり

 私は書道部の部長の『花崎 麗葉』です。身長は高くショートカットであり、制服は男子のスラックスを履いている。最初は男装であったが今年から正式に女子の制服として認められた。


 そして、今の目標は学園祭で飾る一品を創作することである。うーん、スランプだ。ここは自販機で珈琲を飲もう。一階の部室を出ると体育館の隣の自販機に向かう。


『キャー、麗葉様よ』


 体育館の中から黄色い悲鳴が鳴る。一年の女子バレーボールの人達だ。扱いは完全にアイドルである。


 私は珈琲を買うと隣のベンチに座り、この一杯を楽しむ。そして、いい天気だな、と、空を眺めていると……。


「誰だ?」


 後ろから手で目隠しをされる。


「はい?」


 手をほどいて後ろを見ると、綺麗な見知らぬ女子が立っていた。その容姿は可憐でコスモスの花に例えられた。


「どちら様で???」

「やだな、恋人候補の『元町 かすみ』ですよ」


 なんだ、コアなファンか。時々勘違いしたファンが寄ってくるのだ。安心して、ふと、警戒心が解けた瞬間です。


 すぅー


 それはファースト・キスであった。私の唇は奪われてしまったのだ。


「甘い……」


 胸はドキドキして、言い知れない感情になった。それは心が奪われた気分であった。


「でしょ、でしょ。でも、麗葉様が初めてなのは予想外だな」

「失礼な、それから呼び名は『麗葉』でいい」

「なら『かすみ』と呼んで」


 それは初恋であり、かすみとの恋の始まりであった。その後、私が部室に戻ろうとすると。


 「何故、付いてくる?」


 かすみが私の後を付いてくるのだ。


「えへへへへ、自分の部室に向かっているのです」


 子供の様に笑う、かすみは可憐であった。そして、書道部の部室の前で顧問の片崎先生と会う。


「はい、麗葉ちゃん、丁度良かった、新入部員の元町さんよ」

「ヤダな、先生『かすみちゃん』と読んで」

「はい、はい、かすみちゃんね」


 は?


 新入部員?聞いてないよ?私が顧問の片崎先生に抗議すると。


「だから、今、紹介したでしょ」


 それを言われると何も返せない。私は部室前の窓にいた、でんでんムシくんに話かける。


「麗葉ちゃん、それはやらない約束でしょ」


 は!?


 それは書道部のアイドルの私が禁止されている事であった。片崎先生に止められると。それを見た、かすみは口元がωになっている。ああああ、嫌な予感しかしない。


 しかし、かすみはそのまま部室の中に入る。あー怖かった、どんな嫌味を言われるかと思った。


「はい、はいーーー、麗葉部長の秘密をSNSにアップと……」


 ひいいいい、それだけは止めて!!!


「そう?ウケでいいなら止める」


 何の話だ、と、小一時間話そうとしたが仕方がない。こうして、私がウケである事を了承した。


 その後、部室内に入り。顧問の片崎先生がかすみを横に立たせて自己紹介を始める。その他の部員は佐藤、鈴木、田中の女子三人組であった。


「私が入ったら、乙女の花園が完成です」


 そうなのだ、この書道部は顧問である三十路の片崎先生を含めて女子だらけであった。


 『乙女の花園』なる、かすみのセリフに、その他、大勢の佐藤、鈴木、田中の三人から歓声が上がる。


「かすみちゃんも道具はあるわね、早速、部活動を開始よ」


 さて、今日も学園祭に向けての作品作りである。私は先に部室に来て途中であった。


さらさら、さら……。


 書かれたのは『命』の一文字である。うーん、いまいちな気分だ。


「麗葉、何、その外人のタトゥーみたいな題材は?」

「あ、これは半紙に『命』を吹き込むとの意味なの」

「はーさいですかー」


 ダメだかすみには芸術が解らないらしい。


「かすみも自由に書いてみて」

「はーい」


 さらさら、さら……。


 半紙の書かれたのは『竜王』であった。お前はタイトルを取った時の記者会見か?


 まあいい、私はかすみがもう一枚書くのを待つ。


 『焼肉定食』


 うむ、お決まりの四字熟語だ。

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