Lv.7「大腿筋膜張筋です」





(ガラッとドアが開く)

大腿筋膜張筋だいたいきんまくちょうきんです」


「いきなりすぎるって? 前置きなんてもういいっしょ」


「約束どーり体操服で来たね。エラいエラい♪

 今日はね、太ももの筋肉だから。

 さすがにパンツいっちょになってもらうのは申し訳ないからさ。

 はい、そこに立って」


(床を歩く足音)

大腿筋膜張筋だいたいきんまくちょうきんは、骨盤こつばんの外側からひざの外側につく筋肉で……

 ちょっと、動かないで」


「これ、かなぁ?

 骨盤の横のとこから下に伸びて、途中で腸脛靭帯ちょうけいじんたいとなってひざ下の外側につく……」


「あー、わかってきたかも。これだな。

 え、痛い? ゴメンゴメン。

 へぇー、上のほうの筋腹きんぷくのとこはやわらかいけど、途中から腸脛靭帯になると硬い……

 すごいなぁ、感触が全然ちがう」


「ねえ、ちょっと動かないでって。くすぐったいの?

 あぁ、すごい。なんかこの靭帯じんたいの感触、硬さがほどよくてクセになる……」


「わっ、え、ちょっ」


(ガタン、と倒れる音)

「いたた……大丈夫?

 あはは、くすぐったくて倒れちゃったの? ゴメン、やりすぎた」


「立てる? ってか、アタシがどかなきゃ立てないか」


(廊下を走る足音と、生徒の話し声。だんだん近付いてくる)

「ヤバっ、だれか来たかも!

 かくれて、かくれて」


(ガタガタと音を鳴らしながら、教卓の下に隠れる)

(その瞬間、教室のドアがガラッと開く。

 教室に入ってきた生徒の足音。なにかを運び込んでいるのか、音は止まない)


(小声で、ささやくように)

「……教卓の下はさすがにせまいね。とっさにかくれちゃった」


「ふふ、肌があたってる?

 いっつもさわりあいっこしてるのに、今さらじゃない?」


「……もしかして、意識しちゃってんの?

 かわいいなぁ、キミは」


「でもアタシも……ちょっとだけ、ドキドキしてる、かな」


「うそ。ちょっと……じゃない。だいぶ、ドキドキしてる」


(足音がして、ピシャン、と再びドアが閉まる)


(ガタガタ、と2人が教卓の下から出てくる)

「……はー! やっと出られた」


「ふふ、くっついてると暑くて汗かいちゃった。

 今日も、アイス食べに行こっ」





 Lv.7 大腿筋膜張筋 Clear!!!

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