Lv.3「ねぇ、胸鎖乳突筋さわっていい?」




(屋外。2人はベンチに並んで座っている。

 夏。ミーンミーンとセミのなく声)

(部活の生徒の声)


「ねぇ、胸鎖乳突筋きょうさにゅうとつにんさわっていい?」


「暑いねーじゃなくてさ。話ごまかすなって」


「……だって回りくどく言ったってしょうがないじゃん。

 もうストレートに言うことにした」


「ねぇ、さわらせて?」


「だって、こんなの頼めるのキミしかいないもん」


「え、だってさ。

 女の子に頼んで変態って思われたくないしー、彼女もちの男子には頼めないしー」


「えっ、キミ、カノジョいるの!?」


「……ウソかーい! そんな切ないウソつくなって!」


「アタシ? いないいない。いたらカレシの筋肉触るっつーの」


「ウチらの関係??

 え~……身体の関係……じゃないか、筋肉のカンケイ?」


「筋肉めあてって……まぁ、実際そうだけど。

 でもさすがのアタシも、嫌いなヤツの筋肉は触んないよ」


「……嫌いじゃ、ないよ?

 嫌いじゃないっていうか、まぁそこそこ好きなほうっていうか……

 って、ねぇ! そんなんいいから、胸鎖乳突筋きょうさにゅうとつきんさわらせてって!」


「わーい! ありがと。じゃあ、ちょっと上向いて」


(顔を近づけて、触診しながら)

「胸鎖乳突筋は、耳の下の硬いトコから……

 あはっ、またヘンな声だしてる。

 耳、弱いの?」


「そこから首すじを通って……

 鎖骨の内側についてるんだって」


「なんか、やわらかい。けど、鎖骨のとこは細くて硬いね。

 ねぇ、右向いて」


「わぁ、すごい。胸鎖乳突筋のスジがくっきり出てる!

 さっきより硬くなったよ!」


「なんか……胸鎖乳突筋と鎖骨のあいだのってちょっとくぼんでて……エロいね」


「セクハラぁ? エロいねって言っただけじゃん!

 じゃあ、キミもアタシの胸鎖乳突筋、見てみなよ」


「ほら、耳の下からはじまって……鎖骨の内側に伸びてるの、わかる?」


「横向くとくっきり浮き上がるから、見てて。

 ……ほら、浮き上がってきたっしょ」


「……あ! キミもエロいって言った!

 やーい、セクハラセクハラ~!」


「でも、わかるでしょ。なんかエロいよね。

 えっ……さ、さわるの? いいけど、汗かいてるよ?」


(触診されながら、戸惑ったように)

「んー……なんか、さわられると、ヘンなかんじ……

 くすぐったいっていうか、ぞわぞわする……」


「ね、もうそろそろ……

 ひぁっ!」


「み、みみ、耳さわった!」


「おあいことかじゃなぁい!! 絶対わざとでしょ!?

 耳まで真っ赤って、そ、そりゃそうでしょ!!」


「もう! いっつもキミのペースに持ってかれる……!!

 つぎこそ覚悟しといてよね!!」


「主旨かわってる? そんなん知るか!」






 Lv.3 胸鎖乳突筋 Clear!!!

       Next ➠ Lv.4 大腿直筋

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