第15話恋文

(君への手紙を誰にも気付かれずに書くには、この時間しかない)


キョロキョロと辺りの様子を確認した僕は、こっそり部屋から抜け出した。


ここから数100メートル程行った所に、開けた台地がある。


そこは言うまでもなく、数えきれない星々が“我を見よ”と言わんばかりに輝いていた。


前もって呂望(リョボウ)さんに訊いておいたやり方を、まるで呪文でも唱えるかのように、口の中で言葉を転がしてみる。


一通り練習が終わり、僕はスーッと音を立てずに、濃紺色に包まれた満天へと瞳を向けた。


「君は星読みだから、受け取れるよね?」


そう言って、次に僕は心の中に浮かび上った不安を掻き消す為、そう強く願ってから天を指差す。


そして、君の笑顔を想像しながら、“大好き、明日会える?”と誰にも見られないぐらいのスピードで書き記した。


終わったと同時に、恥ずかしさで顔が真っ赤に染まっていることが分かる。


それも束の間、冷たい秋の夜風が僕の火照った頬を撫でて冷ましてくれた。


「これで、呂望(リョボウ)さんにからかわれなくて済むな……」


呟いて、僕は俯き加減のままの姿で、その場をあとにする。


“どうか、風露(フウロ)さんに思いが伝わりますように”なんて、少し恥ずかしい言葉を胸に秘めながら……


令和3(2021)年11月14日14:15~14:50作成

※土台だけ作ってみました。


Mのお題

令和3(2021)年11月14日

「夜中にこっそり書いた物語」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る