第10話ヒラヒラと舞い降りたるは
「なんだろう……
空から何か降ってきた」
v薄曇りの空を仰ぎ見た少年の顔に、まるで狙いを定めていたかのように、冷たいものが当たる。
それを右手の甲で拭き取り、“今度は正体を暴いてやるぞ!”と気合いを入れ、次を待つ少年-
“今か今か”と待ち続けて数十秒後、第二弾がゆっくりと彼目掛けて落ちてきた。
しかし、それは顔に当たるや否や、直ぐに溶けてしまう。
彼が想像していたものとは違っていたが、優しく柔らかいものであることは確かなようだ。
不思議に思った
どうやら、この物質なるものをどうしても捕らえたいようだ。
すると、空は彼の願いを叶えてくれたようで、先程よりも多めに、間を空けずに降り落としてくれる。
「冷たい!」
それが
不満を顔一杯に表して、
「
「あっ、師匠!」
“いつの間に帰ってきたのか?”と疑問に思いながらも、声のした方向へ瞳を向け、“お帰りなさい!”と嬉しそうな声で出迎える
その双眸には、大好きな師匠-雲水真人が微笑みながら立っている。
彼の両手には、集落へ行った時に物々交換をした戦利品が入った袋が、大事そうに握られていた。
「師匠、何を頂いてきたのですか?」
近づき、じゃれつきながら興味で瞳を輝かせた、
「芋や粟といった食べ物だよ」
「食べ物ですか?」
“有難いことですね”と、彼はにっこり笑って言った。
「
今度は
そう、目の前にいる彼は厚手のコートを身に付けていなかったのだ。
それでも子供の体温が高い事を知っていた
「空が曇った時、何か得体の知れない
「そうだったのか……
それは“雪”という名の空からの贈り物だよ」
「雪……ですか」
「素敵な名前ですね」
と、瞳を細めて言った。
「
「はい!」
が、しかし当の
痺れを切らした
「早く家の中へ入りましょう!!」
と、雲水を急かす。
それを合図に、天使の羽にも似た“雪”と呼ばれた
令和3(2021)年7月10日17:35~10月4日11:49作成
Mのお題
令和3(2021)年7月10日
「羽」
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