第4話 新しい家族                                                       

 この日は朝からけっこう忙しい。

 近くのコンビニに行ってアイスコーヒーとコーラ、ミネラルウォーターなどの飲み物を買い込む。次に朝から開いているパン屋さんに行き、十枚切りの食パンを購入する。焼きたてパンの香りは食欲をそそる。スーパーで買う食パンもいいが、パン専門店で買う食パンもやはりいい。

 ここの食パンは耳まで美味しいのだ。


 買い込んだものを両手にもち、一旦自宅に帰る。

 壁の時計を見ると、午前八時を半分ほど回っていた。

 私が買い物を済ませているあいだに、菜々は目をさましていた。

 すでに調理をはじめている。

 昨日のうちにしこんでおいたポテトサラダにまだ揚げていないコロッケがキッチンにならんでいる。

「食パンかってきたわよ」

 タコさんウインナーをつくっている菜那に声をかける。

「ありがとう、菜緒ちゃん。テーブルおいといて」

 菜那は器用にウインナーに切れ目をいれていく。私には到底できない真似だ。買ってきた飲み物をいったん冷蔵庫にいれる。

「じゃあ私、車かりにいってくるわね」

 トーストとコーヒーという簡単な朝食をすませて、私はまたマンションをでる。

 外に出た私は心地よい朝の風をうけながら、レンタカーにショップに向かう。すでにネットで予約をすませてある。手続きをすませて、私は借りた軽自動車を運転して、自宅にもどる。

 マンションに戻ると菜那ができあがったお弁当をクーラーバックにつめていた。私は飲み物を別のクーラーバックいれる。

 荷物を持ち、私達はレンタルした軽自動車にそれを持ち込む。運転するのはもちろん私だ。菜那はあんなに手先が器用なのに運転は壊滅的なのだ。

 車を三十分ほどはしらせると菜那が行きたがっていた臨海公園に到着した。

 公園は平日ということもあり、かなり空いていた。

 私達の他にはカップルが一組、家族連れが一組といったところか。

 私達が海が見える芝生のところにレジャーシートを広げて、そこに座る。

「じゃーん!!」

 菜那がうれしそうにレジャーシートに手作りのサンドイッチを並べる。

 ほうほうポテトサラダ、コロッケ、ツナのサンドイッチ。タコさんウインナーに厚焼き玉子。菜那の厚焼き玉子はあまくて格別なんだ。でもちょっとつくりすぎじゃないかな。

「すごいけど、けっこうな量ね」

 私は美味しくて可愛いサンドイッチたちを写真におさめる。あとでネットにあげよう。

「へへっがんばりすぎちゃった」

 照れる菜那もまたかわいい。まあいいか、あまったら夜ご飯にまわせばいいか。

 

 私達は潮風を浴びながら、菜那の作ったサンドイッチを食べた。ポテトサラダのサンドはしっとりしていてじゃがいものホクホク感がたまらない。コロッケはサクサクで濃いめのソースが塗られていて、これも私好みで美味しい。ツナサンドはきゅうりが入っていて、この食感もたまらない。結局たべすぎてしまうんだよね。

 なんやかんやで私達はサンドイッチはすべて食べきってしまった。

 食後のコーヒーを飲んでいると菜々は私の膝枕で寝だした。

 今日は朝早くに起きて準備に忙しかったからね。こういうところでのお昼寝もいいだろう。

 菜那の頭を膝にのせ、私は持ってきた文庫本を読む。こいうところまで来て読書というのもなんだかなと思うけど、こんな時間はきっと私には必要なんだろう。

 本を読んでしばらくすると、にゃあという動物の声がした。

 すぐ近くに黒猫が歩み寄って来ていた。

 右目が金色で左目が青色のオッドアイの黒猫だった。オッドアイの黒猫は菜那のそばにより、体をぐるっとまき、寝だした。菜那も黒猫の私のそばですやすやと眠っている。ここまで信頼されると体温が少しあがるような快感が体の中をゆっくりと駆け巡る。

 このあと、目を覚ました菜那はこのオッドアイの黒猫を気に入り、なんと家で飼うことになった。

 

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