第7話 ハッピーエンドはクライマックスの後に
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由美は、言いたがらなかったけれど、やっぱり私は、知りたくて、何が彼の手帳に書かれていたかを聞いた。自分で直接、見る勇気はなくて、正直、由美にフォローしてもらいたい気持ちでいっぱいだった。
嫌なことが書かれてあったのなら、なおさらだ。
けど、由美は内容についてほとんど語らなかった。ただ、「遺書だったよ」とだけ。
それを聞いて私は、自分で見なくて正解だったと思った。
人が死ぬ前に何を思うのか、どんな思いで文字をつづるのか、そんなものは今の私には強烈過ぎて、耐えきれない。
「占いって私は信じていないのだけれど」
と、由美は言った。
こういう時の、彼女の説得の仕方は、堂に入っていた。
「占いは統計だからね」
――そうか。私と彼の統計学は、100%だったってことだね。
少し安心した。
しかし、よく考えると由美と私の相性診断も100%だったのだよね。どういうこと? 私、彼女に合わせる気も合わせた気も、いっさいしないんだけれど。
そう言ったら、由美は陰のある微笑で、こう答えた。
「ホワミー、あんた私をみくびってるでしょ。あんたの考えそうなことは先刻しょうちのすけ」
そっか。
私は少し笑って、でも100%はすごすぎるよな、と不思議に思った。さすが親友。されど親友。そこまでピッタリ息が合ってると思うと、逆に普段の言動に幻滅してしまう。どうして私の気持ちをわかってくれないの、親友なのにと。まあ、それは、勝手な私の主張にすぎないんだけれど。
「0%の相性だったんなら、とにかく回答を合わせるために真逆を答えればいいけれど、それならむしろ簡単。30%だった相性をきちっと努力して100%にもしてみせた、そこは彼の思いやりだし、ホワミーへの愛だよね」
……ずきんときた。そうだよ。由美、私もそう考えてた! そう言ってほしかったの!! やっぱり、由美ってわかってる。でも、そこに甘えてこう言うのはやめておいた。
それはね、彼、私が後追い自殺なんてしないように、させないためにプレゼントを残していってくれたんじゃないかなって。
人は、この世で幸せになるために、産まれてきたんだっていう、彼のメッセージだ。それが届いた。
私はもう、誰かに幸せにしてもらう夢は見ない。
ハッピーエンドはいつだって、誰にだってクライマックスの後に、くるんだから。
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