第69話 ほかの3人も乗り越える!

「んもー! なんなのよコイツら!!」


 別の区画でキララはひとりで逃げ回っていた。

 敵の数があまりに数が多すぎる。


「気持ち悪いいいいい! 追っかけてくんなあああ!!」


 子供型の人形が壁や石畳を這うように追っかける。

 槍を飛ばせど降らせどなかなか数は減らない。


「やっばい、行き止まり!? ……んもう、皆とはぐれるし追っかけられるし、ヤなことばっか!」


 人形の大群を相手にキララは奮闘するも、数をさばききれない。

 次第に追い詰められ、


「あぐっ! この、離して、離せええ!」


 身体中に人形たちがへばりつく。

 人形の感触もそうだが、まとわりつく異臭が吐き気を催した。


(この、ままじゃ……っ!)


 キララの瞳に力がこもる。

 

(ああ、もう。最近こんなんばっか。いつも、姫島さんやユウジに助けられて……。なにやってんだろアタシ。こんなの、アタシのなりたい"アタシ"じゃないっ!!)


 グン、と足を踏み込む。

 覚悟を宿し、槍を降らせた。


 自分の身体のラインギリギリ。

 ひとかすりもなく、人形のみを射抜いていく。


 拘束が解かれたら、そこから翼が生えたように跳躍した。


「さぁ、キララのショータイム!!」


 いつもより機敏で柔軟な体術との合わせ技が人形たちを蹴散らしていった。

 最後の一匹は自慢のステッキで思いっきり叩く。


「おいしょっと! ……ふぃ~、見たかキララ様の実力をってね!」


 ゲシゲシと人形を蹴っ飛ばしながら、ユウジたちを探すために奔走する。



「だぁからどこなのよここーーーーー!!」


 ガス灯の行く先になにかあると気が付いたのはその数分後であった。 




「レイブン-Σシグマ。セット・オン!」


 漆黒の変身を遂げたクロトの斬り裂くような体術が人形を次々フッ飛ばしていく中、


(おい、あれマジかよ……っ!)


 マドカはそれよりも速い身のこなしで人形たちを無力化していく。

 人形に恐怖や痛覚といった感覚がないと瞬時にわかるや、球関節をあらぬ方向へ曲げたりねじったりして投げ飛ばし、物理的に動けなくしていった。


(実際見るまであれだったけど……マジであのスタンス貫いてるのか?)


 ダイバーというのは配信映えや収益ばかりを気にして、より高度な実戦技術に関してはあまり目を向けないから、こちらが一歩秀でているとばかり思っていた。


 特にマドカに関しては、殺さないという甘っちょろさに少し頼りなさを感じていたのだが、



「ぜぁああああっ!!」


「グギッ!?」


「ふぅ、終わりましたね」


「マジでか?」


「えぇ、クロトさんもお疲れ様です。その変身姿、とてもよくお似合いですわ」


「……殺さないのか?」


「はい」


「……敵だぞ」


「もう戦うことはできません。これ以上の闘争は無意味です」


「でもよぉ」


「ご不満はごもっとも。アナタの動きはダイバーのそれと比べてより殺傷能力の高い実戦向きな動きをされていました。つまり、そういう環境、そういう生業で生きてこられたのでしょう」


「っ!?」


「アナタの信条を否定も侮辱もいたしません。わたし自身が命を殺めたくない、それだけです」


(………………)


「やりにくいですか? ご迷惑をおかけしております」


「いや、いいんだ。こうして結果出しまくってる以上俺がどうこう言える問題じゃないし。つーか、これは……」


 クロトが倒した数よりマドカが無力化した数のほうが圧倒的だ。

 こっちがいちゃもんつけているようで、申し訳なくなった。


「先を急ごう。たぶんガス灯に沿って行けばいいと思う」


「えぇ、ほかにはないようですし。参りましょう」


 それぞれが合流したのはほぼ同時。

 その目の前にあるのは、小さな古城だった。

 



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次話以降は10/31からスタートいたします


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