第65話 またしてもマドカ!
3年前に起きた山本邸の喪失事件。
当時大雨が降っており、姉弟が留守番をしていたが……。
「屋敷ごとなくなるとかオカルトじみてんな」
「俺もそう思います。そこの土地はダンジョンの影響がくるわけでもない。かと言ってどっかの誰かが魔法使った形跡もないんですよ」
「やっぱりただの都市伝説とかじゃないの? ネットとかでもよくあるじゃん」
「でも、そんな場所にアウター・ダンジョンの入り口が現れるなんて妙じゃないかしら? 偶然にもほどがあるというか」
アウター・ダンジョンの情報はホークアイ財団のほうで規制をかけている。
ゆえにアルデバラン以外は知らない。知らないのだが……。
「あら、ユウジさん。ごきげんよう」
風背山駅のバス停へ向かう途中でマドカと出会った。
彼の姿を見るやパァッと明るなり、たたたと寄る。
「本日はアルデバランの方々と?」
「お、おう、そうなんだ! ちょっと行くんだけど」
「どちらへ?」
「え、えっとぉ」
(俺を見ないでくれますかねぇ)
ふたりでどう言おうか考える中、キララが間へ入り、
「マドカさん、ごめん。アタシたち急ぎですぐバスに乗らなきゃいけないの」
「まぁお急ぎでしたか。それほどのダンジョンへ向かうだなんて、配信が楽しみですね」
「えっと、配信は……」
(だから俺みないでってば)
「ねぇ、少し提案なんだけれど」
姫島がコソコソとささやく。
「マドカさんも一緒にっていうのはどうかしら?」
「え゛!?」
「姫島さん本気!?」
「うん、マドカさんなら信頼できるんじゃないかな?」
「すまんマドカ! ちょっとだけタイム! タイムな!」
「は、はい。でも、お時間大丈夫ですか?」
困惑するマドカをよそに話し合いタイム。
「どういうことデスカ姫島サン?」
「彼女は最強クラスのダイバーでもある。そしてこれから向かうのは危険度が未知数なアウター・ダンジョン。これほど頼れる味方はいないわ」
「つまりこう言いたいわけですか? あのマドカってのも、協力者対象に加えろって? ……あの、あくまでアルデバランだけなんですよ。シスター・アルベリーを誘わなかったのは、人選を厳選するためです。中途半端な協力者をむやみやたら増やすことで情報が漏れるのを防ぐためなんですよ」
「あら、シスター・アルベリーをそんな風に言うのは心外ね。私の親友よ。……ま、それはのちのちお説教するとして」
メガネをクイッと上げながら、
「アナタやユウジ君、キララの実力を疑ってるわけじゃない。でもこの先もっともっと強い敵が出てくる。なら、人員は多いほうがいいし、それは信頼に足る実力者のほうがいい。彼女は申し分ないわ。……マドカ・メリージェンヌの実力とか、知らない?」
「あいにく不勉強でして」
「マドカの実力は俺も知ってるよ。大丈夫だ。ヘタすりゃ俺より強いかもしれねえぞ?」
「マジ?」
「強いって意味なら、たしかにね。アタシはあんまりあの人……あれだけど」
(なんで?)
ここまで言われるとクロトの心も揺らいでいく。
考えている時間も連絡する時間もない。ならば己が目で確かめるまで。
クロトはひとりマドカのほうへと歩み寄る。
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