第55話 ふたりのお嬢様、激突!

「ユウジ、あそこに」


「見事に魔物に追っかけられていますわ」


「あれって前見た学生ダイバーたちだな」


「放ってはおけません! いきましょう!」


「よし、【変 身】!!」


 魔物の大群を前に三勇は躍り出る。

 例の3人組はその戦いぶりと、また出会えた喜びに黄色い声援をおくっていた。


 いかに大群といえど、ものの数ではない。


 キララはユウジの戦いぶりにホッとした。

 自制がきき、正義感に満ち溢れたオーラがまぶしい。


 なにより、変身前、自分に向けてくれた笑顔が明るくて嬉しかったのもある。 

 

「ぎ、ギピイ」


 ハーピーがうろたえながら退こうとする。

 追撃しようとするキララを制止するユウジと、ハーピーをジッとみすえるマドカ。


「ギイイイイイイイイ!」


 背中を見せ一目散に逃げていった。

 それ以上追うことはせず見逃そうとしたとき、



「オーッホッホッホッホッ! やはりこうしましたわねえ!!」


「な、なに!? この声は!?」


「上だ!」


「この声、まさか!!」


 ────ドゴォオオオ!!


 頭上から高速落下してハーピーに振り下ろされる大斧。

 その持ち主の豪傑、紫吹マナ。


「え、うそ、紫吹マナさんだよね!?」


「ホントだ。パワー系お嬢様ダイバー!」


「で、でも、なんか様子が……」


 3人組がうろたえ、あとじさる。

 

「お久しぶりですことね、マドカ様。ホホホ」


「マナさん。一体なんのご用です?」


「あらあら寂しいことですわね。ワタクシとユニットを組んでいた仲でしたのに」


「もう昔のことです。わたしはもう……」


 マドカは少し怯えている。

 母親同様、話し合えずの人間だから。


 ユウジが彼女の前にでて牽制をする。


「あらあらかわいそうに。その女になにを言われたか知りませんが、すっかりほだされてしまいましたのね。あぁ~ん♡ カ・ワ・イ・ソ♡」


「ち、ちょっとアンタ! 一体なんなの!?」


「マドカ様、アナタずいぶんとユウジ様がお気に入りになられたのね。ホホホ、でもそちらの女性のほうが魅力的でしてよおおお」


 魔物との戦いでもないのに、マナが現れたことで場の空気が一転。


 こちらが配信中だろうがおかまいなしの殺気。

 


「え、なんだって?」


「ダイバーバトル、ご存じでなくて? ワタクシが望むのは、純然たる殺し合いですわ!」


 ダイバーバトル。

 文字どおりダイバー同士の戦い。


 宝探しや討伐数、単純なリレーなど多岐にわたる。

 だが殺し合いともなれば話は別だ。


 実を言えばダンジョンという極限状態下での決闘を規制する法律はあるにしても、


 "対人倫理的にやらないほうがいいよ"


 という程度である。


 しかしハイリスクローリターンであることは言うまでもない。


「アナタ、どこまで堕ちたというのですか!」


「ワタクシはダイバーバトルがしたいのです。でなければ……」


 ほんの一瞬、視線を例の3人組に向けた。 


「待て! ダイバーバトルがしたいってんなら」


「待ちなよユウジ。ひとりでカッコつけるのはよくない。アタシもやる。アイツはアタシらに喧嘩うってんだから! 安心して、殺したりはしない」


「ホホホ、そんな中途半端な気持ちで……」


「お待ちなさい!」


 玲瓏として響くマドカの声。


「マナさん……」


「はい……」


「1on1、わたしとアナタの勝負でなら、受けてたちましょう」






 

  

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