第54話 げえ!キララ!

 マドカと一緒にパトロールをすることになったユウジだったが、今日はそれほど魔物が出てくる気配はない。


「いいえ、油断はなりません。これでいいのです」


 マドカはユウジが離れることを許さなかった。


「まだ奥まで続いております。そこで魔物に襲われてしまっているダイバーがいるかもしれません。わたしたちふたりの力で助けましょう!」


「お、おう。俺はかまわねえけど」


「ふふふ、はい!」


 終始ご機嫌なマドカにクエスチョンマークを飛ばしつつ、ユウジは彼女についていくが、


「あれ、ユウジじゃん」


「あ!」


「…………」


 分かれ道から現れたのは、キララだった。

 

「こんなところでなにしてんの? その人ってたしか」


「ごきげんよう。アルデバランのキララさんですわね。マドカ・メリージェンヌです」


「あぁ、どうも。キララです。……ねえユウジ。こんなところでなにしてんの?」


「なにしてんのって、いや、俺はここに修行へきて」


「修行が、女の子とこうやってのんびり歩くこと?」


 ────ん?


「いや、この人とは」


「あれだけ心配したのに、なんかなー。しゃくぜんとしないっていうか。姫島さんだってあれだけ心配してたのになーって」


(あれ、ふてくされてる?)


「そりゃユウジの交友関係にまでユニットメンバーが口出すのもあれだと思うけどさ。なんか相談あってもいいじゃん。てかあれだよね? ナンパとかそういうんじゃないよね? アタシらに心配させといてそんなこと、ね?」


(あ、あ、あれえ~?)


「あの、キララさん。ユウジさんが困っています。まだ心癒えぬデリケートなときに、ユニットメンバーであるアナタが問い詰めをするのはいかがなものかと」


「マドカさん。彼のそばにいてくれたのはありがたいけど、やっぱりこういうのは聞いとかないと。ナンパされたとかじゃないよね?」


「な、ナンパなど。お下品ですわ。ユウジさんがそんなことをするはずがないではありませんか! ユウジさんは、その……わたしの……あぁ恥ずかしい!」


 ジットリと見てくるキララにユウジは苦笑い。

 しかもキララは配信中。


 "修羅場キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!"


 "マドカ・メリージェンヌ! マドカ・メリージェンヌですわああああああ!!"


 "昼ドラ確定"


 "グラドルダイバーvs.お嬢様ダイバー"


 "やめてー! ユウジのために争わないでー!"」

 

 "いえ、ね、いつかユウジくんこういうことになると思ってたんですよ"


 "いつかうしろからグッサリ刺されそうなユウジくん"


「そんなことしない!」


「しませんわ!!」


 別の意味でコメント欄は燃え上がっていた。

 このときばかり、ユウジはネットの醜さを憎んだ。


「その、マドカとはちょっと修行してるときに出会ってな! 色々助けてもらったんだ」


「ふーん」


「んで、また今日出会って、一緒にパトロールしないかって話になってさ。俺も協力することにしたんだよ!」


「……ふーん」


「そういうことでございます。わたしたちは、力を合わせて、迷える衆生ダイバーを救いにまいります。ではごきげんようキララさん。よい配信になりますように」


「ちょっと待って」


「はい?」


「アタシも行く」


「え、キララも!? いいのかよ配信中なんだろ?」


「いいじゃん。パトロール配信」


「あの、キララさん。このパトロールは……」


「まぁ、人数は多いほうがいいしな。キララとなら連携とりやすいし。すっげーんだぜキララは。俺の仲間だから。そこらへんは信用してくれていい」


「ぁ……」


「はいよろしくお願いいたしまーす☆ リスナーの皆! これから大物ふたりとパトロール配信やっちゃうよー!」


 言うまでもなくコメントは大盛り上がり。

 中には「ユウジ刺されるんじゃね?」などというコメントもあった。



「………もう、ユウジさんったら」


 初めてにも近い気持ちに、マドカの心はモヤモヤとした。

 3人は奥へと進む。




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次話以降は10/13からスタートいたします

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