第17話 ユニット結成だ!
新フォームの配信から3日後、また3人で集まる機会があり、カフェでくつろいでいた。
「それであの紅蓮アッパーってのやつら、変な縛りしてたんだよ。回復なし、アイテムなし、人数も限定……なに考えてんだって思った」
「はぁ? それ自殺行為じゃん」
「テコ入れしようとして失敗したパターンね。でも、アナタに助けてもらったおかげでちょっと伸びたらしいわよ」
「うぅん、あの一件で俺も伸びたけど……なんだかなぁ」
「っていうか、あのフォームなに? 今ま見たことないんだけど?」
「あぁ、俺の戦い方ってもうひとつあるんだよ。パワー特化なのがブレイク・フォーム。んで、スピード特化のラッシュ・フォーム。でも、ラッシュ・フォームは使いこなせてなかったんだ。アーカイブ見りゃわかるだろうけどさ、走ってるだけでもかなりコントロールがいるんだ」
「あぁ、そういうことなのね。でもカッコよかったわよ。近くで見たかったくらいにね」
「マジっすか!?」
「今度写メ撮らせなさいよ」
「お、おう。そこまで認めてくれてるとは」
「当たり前じゃん。アンタはもうアタシたち人気ダイバーの仲間入りしてんだから」
「そ、そっか。ハハハハハ、なんかまだ現実感ねえな」
「しっかりなさいよ。もうすぐ30万人でしょ?」
「んなこと言われてもなぁ」
「はいはい、ふたりとも。今日はユウジ君を褒める会だけじゃないのよ。本題があるんだから」
「え、そうなの?」
「俺を褒める会だったんすか」
「ここからは大事な話だからよく聞いてね。これは私の提案だから、断ってくれてもいい」
「いいから話してみてよー」
「提案ってのはなんすか?」
「ねぇ、3人で"ユニット"組まない?」
「嘘マジで!? 夢みたい!」
「ユニット? チームダイバーってことっすか?」
「そうじゃないわ。ユニットって知らないかしら?」
「ん~あんまり」
「簡単に言えばチームダイバーは複数人でひとつのダイバー。紅蓮アッパーがそうね。ユニットは特定のダイバーがグループつくって一緒に企画とか配信とかやるって感じ」
「そうなのか。え、姫島さん、それって……俺もオッケーってことっすか!?」
「ふふふ、そう言ってるじゃない。私たちの最初のコラボ、覚えてるでしょ。あの一件がかなりリスナーの印象に残ってたみたいでね。雑談配信とかでもよく話題に上がるのよ」
「あ、それアタシも!」
「そうなの?」
「アンタ、アーカイブとか見てないの?」
「いやぁ~最近は動画追えなくて……」
「ふふふ、あるあるね」
「それに俺雑談はやったことないから、ハハハ」
「やってみりゃいいのに。色々楽しいよ」
「しゃべんの苦手なんだよ。おっと話そらしちまったな。……それで姫島さんはあのコラボのときみたいに3人でしようってことなんすね」
「そ。この3人で企画やったらすっごく盛り上がると思うの」
コラボと違い相性や実力を理解した上で、特定の目標を共有できるというのと配信内容の幅が広がってそれぞれの知識や技術が活かしやすい環境に身をおけるのが良いところだ。
ようは個人プレーではなく、信頼しあえる者同士のチームワークが前に押し出される形になる。
「俺は大歓迎っす! とことんコキ使ってください!」
「アタシもオッケーだよ。この3人だったら高難易度のダンジョンも、アウター・ダンジョンだって乗り越えられる気がするし」
「じゃあ、決まりね。それじゃあユニット名決めないとね」
「ユニット名。おお、なんか本格的っすね。カッコイイのがいい!」
「……一応聞くけどさ、なににするの?」
「ザ・ロマンス!」
「……………………ね~姫島さんどんなのがいい~?」
「え、えぇ、そうね~」
「ってうぉおい!」
ユニット名決めと、ユニットを組むという発表をいつにするか。
そんな内容をわちゃわちゃと話しながら、時間は過ぎていく。
楽しくもせわしない休日はあっという間に過ぎていった。
後日、姫島の告知により、注目度は一気に集まり、その効果で津川ユウジの名前もさらに広がっていくことになる。
そしてユニット名は……"あとに続くもの"を意味する『アルデバラン』。
コメント欄もSNSも大盛り上がりの歓迎ムードだった。
「夢みたい、いや、夢以上だ! 俺の伝説が、ここから始まる! ひゃっほーっ、あ゛、痛っで! 小指ぶつけたっ!」
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