第7話 急遽JKグラビアアイドルもきた!
バイトが終わって自宅マンションに戻ったとき、姫島から電話がきた。
『ごめんねユウジ君。今時間いい?』
「はい、どうかしましたか?」
『次のコラボなんだけど、もうひとり女の子が来ることになっても大丈夫?』
「え、もうひとりっすか?」
『前に案件で一緒に活動した娘で、またコラボやりたいってメッセージが来たの。今回をおいて先はまた私も忙しくなっちゃうし、彼女も忙しいって言ってたし……君が嫌なら断るけど』
「いやいや全然! むしろ、その、ははは、やっぱりなしって言われちゃうんじゃないかって」
『ふふ、そんなこと言わないわよ。じゃあ当日はよろしくね。あ、その子、すっごくかわいい子よ? もしかしたら君も彼女のチャンネルみたことあるかも』
「へ~、やっぱり有名ダイバーが来るんですねえ。ん~誰だろ」
『配信を見たことがなくても、もしかしたらステキな雑誌とかで見たことあるかもね~』
「雑誌? モデルかなんかっすか?」
『ふふ、それは出会ってからのお楽しみ。じゃあね』
「はい、おつかれさまっす。……なんだろ? でもかわいいってなら、まあいいか!」
そしてコラボ当日。
街を一望できる風背神社へとやってきた。
ここは一番風が吹くところ。
長い石段の脇にある風車はつねにカラカラと音を立て参拝者を出迎えている。
「待ち合わせ場所はここのはず……」
「ユウジ君、こっちこっち!」
「姫島さん! どもっす! あれ、もうひとりの子は来てないんですか?」
「学校の用事が終わったらすぐにくるって言ってたからもうすぐじゃない?」
「え? 学生なんですか?」
「君も知ってるんじゃない? 風背山学園」
「おお、俺の出身校です! あれ? でもそれで雑誌に載ってるとかって……」
小首をかしげていると、長い石段をコツコツと登ってくる音が聞こえてくる。
学園の制服に身を包んだ少女が息を荒げながらこちらに手を振った。
「遅れてごめんなさーい。はぁ~休日で先生の呼び出しとかマジだるい~」
「大丈夫、まだ時間あるから。ふふ、久しぶりねキララ」
「姫島さん、おっつ~♪ あれ、もしかしてこの人が?」
「そ、津川ユウジ君」
「津川、ユウジ……」
「あぁ、よろしく! 俺も風背山学園出身なんだ」
「……ふ~ん」
「そういえば、キララ……どっかで聞いたような? あ、もしかして登録者数27万人の『
「ま、当然知ってるよね。アタシってばけっこう頑張ってるから」
彼女は学生でありながらもダイバーとして活躍し、まだ新人ではあるが大人にも負けないそのプロポーションをいかしてグラビアアイドルもやっている。
ボリューミィな髪に魅力的なつり目がなんとも人を惹きつけた。
「俺よりずっとあとに始めたってのにフツ~に追い越されてんだからなぁ。めげそうだ」
「まぁ、頑張れば……?」
意外にもというべきか、それとも当然なのか。
ユウジに対してそっけない態度で視線もどこか別を見ている。
(ま、こっちは登録者数数人だもんなぁ。こっから認められればいいか!)
「はいはい、そろそろ時間よ。準備はおこたってないわね?」
「もちろん! 姫島さんと一緒なんだから完璧だよ!」
「ところで今日はどこへ? このあたりにダンジョンってなかったはずっすよ?」
「もしかして、見つけたの姫島さん!」
「えぇ、今日行くダンジョンはレア級よ」
「レア級? そんなダンジョンあったかなぁ?」
「聞いたことないかしら? ────アウター・ダンジョン」
「アウター・ダンジョン?」
「マジ? 知らないの? 次元の歪みの中にあるダンジョン。いつどのタイミングで現れるかわからない激レアな場所だよ?」
「そんな場所があったのか。いやぁ~俺目の前のことで手いっぱいだったからそういう知識が全然、あはは」
「呆れた。ホントにアタシの先輩?」
「う゛、それは言わないお約束」
「話を続けるわよ。レア級だからこそ、そこで得られる宝物はすごいのばかりって噂だし、なにより再生数だって稼げる。ユウジ君のチャンネルも右肩上がりかもよ?」
「マジで!?」
「でもそのぶん強い魔物もいるってわかってる?」
「おう、安心しろ。どんな強い魔物でもぶっ飛ばしてやる!」
自信満々の彼を、キララはじっと見つめた。
「……ま、ほどほどにね」
「戦いに関しちゃ誰にも負けねえって自負してるから、遠慮なく頼れよ!」
「そういうのは再生数と登録者数を爆上げしてから言ってくださーい」
「だからそれ言うなって!!」
「ホラふたりとも。そろそろ行くわよ。案内するから着いてきて」
アウター・ダンジョンにおけるコラボ配信。
この配信はどのダイバーのものよりも注目度が高く、配信前段階にもかかわらずダンチューブのコメント欄や掲示板では大騒ぎとなる。
"すっげ! ヴィリストン姫島とキララがまたコラボだ!"
”あともうひとり。……津川ユウジ?”
"いや、誰?"
"雑魚乙"
"荷物持ち乙"
"見つけた。登録者数ゴミのダイバー"
"あるんだよあ。こういうコラボにひとりふたり底辺混じってんの"
"強いの?"
"カメラアングルとか演出がゴミ過ぎてよーわからん"
"実力はあるかもしれないけどほかのダイバーと比較しづらい"
"まぁ登録者数からして大したことないだろ"
"足引っ張るのだけはやめてほしい"
"まぁ様子見だね"
"死ぬなよーwww"
ユウジへのコメントはなんともな感じであった。
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