第2話 変 身 !
地元、
そこは明日あたり行ってみようかと思っていた場所だ。
「ヴィリストン姫島がここに。……ほかのダイバーは、いないのか?」
怪訝に思いながらユウジは奥へと向かう。
ライトをつけながら奥へと進むと見覚えのあるものを見つけた。
「え、これって……スカート? でもどこかで、いや、まさかこれって……っ! 姫島さんが今日着てたやつ!?」
泥まみれになったそれを拾い驚愕するも、それだけにとどまらなかった。
彼女がはおっていただろう上着もその先に捨てられていた。
「一体なにが……。いや、待て、人影が……。誰か倒れてる!!」
駆けつけた先に見えたのは信じられない光景だった。
────ヴィリストン姫島。
身体中は泥まみれで、ブラジャーを外されまいと守るように片手でおさえており、ガーターベルトをさらした美脚をくの字に曲げて仰向けに横たわっていた。
推しのあられもない姿。
普段なら興奮さえするだろうが、状況が状況だけにユウジは困惑と恐怖に包まれる。
「な、なんでこんな!!」
「ぅ、うぅ……」
「あの! 大丈夫ですか!?」
ユウジは上着を脱いで彼女を包んでから壁に寄りかからせる。
かなりダメージを負っているようで、意識を失っていた。
彼女をここまで至らしめるほどの魔物が現れたとでもいうのか。
もしそうだとすれば、それはあの配信の最後に映った影。
次の瞬間、彼の第六感的な意識が脳をめぐる。
なにか来る。闇の奥の向こう側だ。
「来やがったな!!」
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……」
「"D・アイ"、検索してくれ」
『
『"ハギトリア"。縄張りに近づいた生き物の皮を剥いでからバラバラにする残忍な魔物です。人間の場合は装備や衣服を剝ぎ取ったあと、ジワジワといたぶるのを趣向としています。人形がいくつも集まって団子状のようになった形状ではありますが、その攻撃性能と俊敏性は目を見張るものがありますのでご注意を』
「なるほど、たしかに気持ち悪い見た目だな。……本来なら活躍を配信してえけど、推しのこんな姿をさらすだなんてダイバーの風上にも置けねぇ!! 見栄えとか一切抜きだ! ぶっ潰してやる!!」
推しをこんな目にしたことへの怒りの感情。
左腕が輝きをおびると、金と黒を基調としたガントレットが現れる。
手の甲の部分には赤い宝玉が埋め込まれ、そこから神々しいエネルギーを放つ。
太極拳のようにゆるやかな動きのあと、
「フゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウ……────【変 身】ッ!!」
ガシャン、ガシャンと重く硬い音が鳴り響き、光から解き放たれるとその全貌が露わになる。
まるで名家の甲冑のように荘厳で勇ましい佇まい。
これが彼の持つダイバーとしての力。
思いっきりのパワー勝負に特化した基本スタイル、『ブレイク・フォーム』。
「さぁ、超ド派手にブッ飛ばしてやるぜ!!」
フルフェイスの奥から勇ましい声が響き渡る。
推しを守るための戦いが始まった。
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