391日目 俺達の過去 塩辛時代

 こんにちは、レンズマンです。

 スプラトゥーン3のグランドフェスが終わりました。


 インクを塗り合うイカのゲーム、スプラトゥーンでは定期的に三派に別れて貢献度を競い合うお祭り「フェス」が開催されます。毎度専用のステージや演出が凝ったお祭り状態になる恒例のイベントです。分かれ方もお題に沿ったものを選んでも良し、応援を担当する「すりみ連合」の応援メンバーを見てその推しについて行っても良し、友達と合わせて選んでも良しと、好きな陣営を選んで参加して競い合います。僕は自分一人でチーム戦のゲームをやりこむことが出来なくて、いつも友達に合わせて参加していました。

 ところが、今回の「グランドフェス」は今までとは違います。期間限定で専用のフェス会場が用意され、歴代のアイドルユニットたちがライブを行っているのです。しかも、今回のお題「大切なのは?」の三派「過去」「現在」「未来」にはそれぞれ1の「シオカラーズ」、2の「テンタクルズ」、3「すりみ連合」と、ナンバリングのアイドルユニットが応援を担当するのです! こ、これは一大事。お題も大切ですが、これは推しの看板を背負う代理戦争でもあるのです!!

 

 あの頃、僕は大学二年生でした。大学生って結構忙しくて、自分で使える時間はたくさんあるはずなのにそれ以上にやることがたくさんあります。勉強して、アルバイトもして、友達やサークル、彼女との時間も大切で。物心ついたころから遊んでいたテレビゲームの時間がちょっとずつ減って行って、それに苛立ちを覚えつつ、生産性が無いから別にいいかと思ったり。時間に追われるあまり、自分にとって得のある行動を選ぶことだけが正解だと学ぶ時期でした。それが正しいことなのかは今でもわかりません。ただ、あの日、家電量販店でたまたま見かけたスプラトゥーンのPVがあまりに楽しそうで、足を止めてしまったのが運命の分かれ道だったのでしょう。

 世間を騒がせている任天堂の新作ゲームのことはちょっと知っていました。それが面白そうだとも思っていた。けれど、忙しく、金もない僕には縁のない世界だと思っていました。当時、WIIUというゲーム機は僕の周りでは人気がなく、ネットのまとめブログでも毎日のように酷評されていたのを覚えています。スプラトゥーンは対人戦が肝のゲームで、どうせ買っても誰も遊んでくれないのでは。それ以上に、やることを増やしたくない。そう思って、僕は意図的にスプラトゥーンの情報を耳に入れないようにしていました。

 でも、見てしまった。カラフルに世界を塗り替える元気なインクリング達のスポーツがあんまりにも楽しそうで、気付けばその場でゲームを予約購入していました。ゲームを買うぞ!!! と決めると、心がうきうきして止まりません。やらなきゃいけないことも上手くいかないこともどうでも良くなって、楽しいことばかり考えてしまう。まるで世界が塗り替えられるように! ゲームって、なんて素晴らしいんでしょう。やらなくていいこともやっていいのだと、スプラトゥーンは思い出させてくれました。

 資格実習が始まって何もかもうまくいかない時、家に帰ってからかじりつくようにしてスプラトゥーンで遊びました。自分の無能さに打ちのめされても、それでも投げ出さずにやり切れたのは逃げ場があったから。「面白いゲームは人を救う福祉だ」と友達に豪語していましたが、馬鹿なりの真理だったと思います。ああしていなければ、あの時の時間はもっと辛かったから。臆病な僕のことです、上手くいかない理由を他者に見出して逃げ出していたかもしれない。そうならなかった理由がスプラトゥーンじゃないなんて、誰にも言いきれないはずです。


 長い前置きとなりましたが、僕にとってスプラトゥーンは過去から積み重ねた思い出のゲームです。というわけで、今回のグランドフェスも当然「過去」派。イマイチすぐれない体調に悩まされながらも、コントローラーを握ってフェスマッチを戦います。お得意の細筆のパブロ、五本の矢が飛び散る弓矢フルイド、初代から愛用していたスプラローラー。色んな武器を試しますが、数で勝る「現在派」に押され、中々勝利を重ねることができません。

 そのうち心も疲れ果て、そろそろ休憩しようかと思ったとき。「トリカラマッチ」だとシオカラーズが応援してくれると噂を聞きました。えっ!? シオカラーズ来るの!?!? こんな所でモタモタしている場合ではありません。同じく過去派の友達「カノン」さんを誘って、トリカラマッチへと戦いの舞台を移しました。

 僕はスプラトゥーンを全作遊んでいますが、1しかストーリーモードを遊んでいなくて、そこに出てきたシオカラーズ以外のユニットにはあまり思い入れがありません。ていうか、逆にシオカラーズに思い入れが強々<つよつよ>なのでそもそも過去陣営一択なんですよね。ていうか、普通にシオカラーズのファンです。ホタルちゃんのタレ目な目つきはずっと特徴的で、変わらず可愛いぜ。そして、ウオオオオオッ、アオリチャーッ! お久しぶりです! 覚えてますか!! 初代から遊んでるレンズマンです!! 何年たっても可愛いねーーッ!!!

 トリカラマッチとは、三陣営がそれぞれチームを分けて戦う変則的な戦い。出現するスーパーシグナルを奪取すると……ステージ上にシオカラーズが登場!!! 大砲でハナビダマを打ち込んで援護してくれます。アオリちゃんの「イカ、よろしくー!」というイカ入り挨拶も懐かしい!!

 1のストーリーモードのラスト、シオカラーズの歌うシオカラ節を聞きながらDJタコワサ将軍をしばき倒したことが昨日のように思い出せます。二人の応援を受ければやる気333倍、高低差に強い筆ブキのフィンセントを振り回して、信じられない人数を倒し<キル>しました。

レンズマン「筆の声が聞こえるぜ、てなーっ!!」

 あの頃のようにテンションがおかしくなっています。いやほんと、このブキ強くて。得意な武器がステージと噛み合ってよかったです。

 相棒のカノンさんとは1時代からのフレンドで、幼馴染でもあります。彼女は僕以上にシオカラーズへの思い入れが強く、生の声援を受けて舞い上がる僕とは対照的にプレッシャーを背負って戦いに臨んでいます。特に、人数が多く事前情報で有利とされていた現在派への危機感が強くあるようで、負けるととても落ち込んでいました。

 そんなカノンさんは、普通に戦えばまず僕よりも強いプレイヤーなのですが、今回はトリカラマッチのステージに苦戦していた様子。それでも投げ出さずに戦い抜いた彼女こそ、「えいえん」の過去派と言えるでしょう。いやホント、通話越しに聞こえる執念がすごかった。仲間でも圧倒されたもん。ファンの鏡ですね。

 バトルに疲れたら特設フェス会場で一休み。三つ会場をループする推しの追っかけをするのも良し、他のユニットの視察をするのも良し。ふ、ふーん? テンタクルズもすりみも中々やるやんな? いや、お、おれは一筋だが? いい音楽に忖度は無いって言うか?

 他にも、入り口付近のゲートからカラフルなインクが降り注ぎ、屋台などの出店が並んでいたりと、言った事のない僕でもわかるくらいフェスを表現していました。会場では観客のクラゲたちに混ざってジャンプしたり手を振って一体感を満喫できます。ふと、普段遊んでいるMMOなら、みんなのアバターと交流しながら会場を回れたんだろうな、なんて思ったり。いつか、他のプレイヤーとロビーで交流できる機能がついたらいいな。

 

 こうして激闘のフェスが終わり、結果は事前情報を覆して過去派の勝利となりました。


 や”っ”た”ぜ”っ”!”


 悪いが、こちとら年季が違うんでね。WIIUの重たいゲームパッドを振り回して腕を痛めていた世代からのプレイヤーが集まっている陣営なので。プロコンなんて動きが軽い軽い。いやほんと、重かったな……WIIUゲームパッド。好きだったけど、不人気なのも分かる気がする。

 ……おっと、話が逸れました。他のチームも手ごわく、彼らなりの信念や執念が感じられる熱いフェスバトルでした。こんなに楽しいならもっと早くから参戦していればよかったな。このフェスが終わればまた敵や味方に分かれるでしょうし、どこかで一緒になったらあの手ごわいライバルたちとも組める日が来る。そう思うと、次の試合が楽しみです。


 ……これはちょっと違う話なんですが。勝利したのは過去で、人気だったのは現在派。僕やカノンさんがシオカラーズ目当てチームを選んだように、応援担当ユニットでチームを選んだ人がそれなりにいたであろうと考えたとしても、未来派が不人気なのは……なんというか、寂しい気もしますね。「あの頃は良かった」とか、「太く短く今を生きるんだ」と思うのもいいとは思うんですが、こう、若者が未来に希望を見出せない今の社会の世知辛さを感じてしまったような気もします。いえ、考えすぎかもしれませんが。

 えっと……お、大人も結構楽しいよ。お金があって、オタク趣味も好きにできるし。未来はきっと明るいよ。だからその、あんまり悲観しないでね。……ううむ、誰目線なんだろう。でも、なんだかちょっと子供たちが心配で。あの頃の僕が楽しくスプラトゥーンをできた様に、余計な不安を抱えずにゲームで遊んでほしいな。

 ふう。余計な話をしてしまった。とにかく楽しいフェスでした。雰囲気良かったし、現実の音楽フェスにもいってみたいな。でも、バンドとか詳しくないんだよな。行先調べて、そこに参加するグループを調べるのが良いんだろうか。例えばシオカラーズが参加するフェス……ニンテンドーライブしかないな……。

 いかん、語りすぎました。この辺で失礼します。これからもシオカラーズをどうぞよろしくお願いします。

 では、今日はこの辺で。お疲れさまでした。

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