第7話 双璧を愛でる
宿泊先の高級ホテルにて。
シャワーを浴びて、身体を清めて。
簡単な食事を摂って栄養補給。準備は万端。
リオンは高級ホテルの広々としたベッドの上で、二人の女性と向かい合っていた。
女性の一方はミランダ・アイス。
アルフィラに仕えている従者の女剣士であり、『北風の調べ』のメンバー。
群青色の髪を頭の後ろで括ったポニーテール。
目つきが鋭く険のある顔立ち。足が長く、スレンダーな女性である。
女性のもう一方はティア・アックア。
同じく、アルフィラに仕えている従者の魔法使いであり、『北風の調べ』のメンバー。
水色の髪を耳の下で切りそろえたショートカット。
ぼんやりと眠そうな瞳。ミランダと同い年らしいのだが、童顔で小柄な女性である。
二人は主人を口説いたリオンを殺そうとしたペナルティにより、リオンに仕えることをアルフィラに命じられていた。
リオンに何をされても文句は言えない立場であり、たとえ抱いて子作りをしてしも構わないと太鼓判を押されている。
「てっきり、約束は有耶無耶にされて、反故にされるとばかり思っていたんだけどね……」
「そんなわけがないだろう。お嬢様の命令だ」
ミランダがリオンを睨みつけつつ、噛みつくように答えた。
「貴様の背中を刺してやろうかとも思ったが……サフィナ様を助けるために貴様の助力が必要だというのもわかった」
「不承不承」
「約束を破れば、アルフィラお嬢様も私達を見限ってしまうだろう」
「悲哀爆発」
「お嬢様の信頼を取り戻すためにも、私はお前に抱かれねばならない。貴様というゴミクズに好き勝手にされて、私が命令に逆らわない忠実な女であると証明する必要があるのだ!」
「一大決心!」
つまり、二人はリオンを殺そうとしたことで落ちた信用を取り戻すため、あえてリオンに抱かれようとしているのだ。
自分は嫌な仕事であってもこなすことができる、アルフィラの命令を守っている……それを証明するために、こうしてベッドに座っているのだ。
「話はわかった……そういうことなら、俺もやりやすいよ」
これは二人への罰。
そして、二人にとってはアルフィラの信頼を得るための儀式。
お互いの利害は一致している。リオンとしても、ここまで至って日和るつもりはない。
二人とも、抱いてやる……そう心に決めた。
「ちなみに……二人は、その……子供は好きか?」
「「…………」」
ミランダとティアがそろって、ゴミを見るような目をリオンに向けてくる。
「いや、変な意味ではなく一般論としての質問なんだけど……」
「……嫌いではない」
「好き」
「そうか……それは良かった……のか?」
「言っておくが、そんなに簡単に子供ができると思うなよ」
ミランダが「フフンッ!」と鼻で笑う。
ティアの方は無表情だが、わずかに口角が上がった気がした。
「子供というのは、そんなに簡単にできるようなものじゃない。ましてや、今日の私は安全日だ」
「同上」
「貴様に抱かれることは了承したが……子供ができるかどうかは運次第。天のみぞ知ることだからな! 仮に子供ができずとも、それは私のせいではない!」
「不可抗力」
「……まあ、そうだな」
二人の言い分はもっともである。
子供は天の授かりもの。
仮に今日の行為によってできなかったとしても、その責任を二人に追求することは酷だろう。
(フッフッフ……馬鹿な男だ)
(愚劣最低)
しかし、納得した様子のリオンに二人が内心でほくそ笑む。
(世の中には避妊のための薬があると知らないのか? 私達はここに来るまでに避妊薬を飲んできた。いくら貴様が無様に腰を振ったとしても、子を孕むことなどあり得ない!)
(無知蒙昧。油断大敵)
(お嬢様の命令によって貴様に抱かれることは了承したが……思い通りにいくと思うなよ! 貴様は私達の術中にある!)
(会心の一撃。クリティカル)
心の中で勝利の笑みを浮かべるミランダとティア。
だが……二人は知らなかった。
リオンは女神によって生き返らせられ、『百人の子供』を作るという使命を与えられた際、『
これはリオンに対して強い感情を抱いている人間に対して、子供が生まれる確率を大きく上昇させる力があった。
その対象には何らかの原因で子供が作れない女性や、『妊娠』という概念が存在しないゴーストやフェアリーでさえ含まれている。
たかが避妊薬くらいで、女神の加護を防げるはずがない。
二人はリオンに対して燃え上がるような強い感情……憎しみと敵意を持ってしまっているのだから。
「それじゃあ、やるぞ」
「「…………!」」
「
覚悟を決めたリオンの行動は早い。
二人の服をすぐに脱がして、ベッドに押し倒した。
意外だったのは、背の高いミランダよりも童顔小柄なティアの方が胸のサイズが大きかったこと。
そして、反抗心の強いミランダがハードめの抱き方を好んでいたことである。
二人が柔らかなベッドにクッタリと沈められるのは、それから五時間後のこと。
そして……二人が自分の体内に芽生えた『命』の存在に気がつくのは、さらに数ヵ月後のことである。
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