第14話
俺が警戒していることに感づいた氷見さんは、俺の警戒を解くために目を見てきっぱりと言い切る。
「警戒させてしまったようですね……私にはあなたに敵対するつもりはありません」
俺とやり合えば、この封印・結界班が壊滅すると思っているから『敵対するつもりはない』と俺に向けて言っているのだろうか? まぁ確かに衰えたとは言え、
恐らく氷見優子、個人としてはくだらない協会内の政治には出来るだけ不干渉を貫きたいのだろう。
「あなた個人の感情は理解しました。だけど物的証拠なしで『はい。そうですか』って素直に信じられる訳ありませんよ」
「……」
「でしょうね……では一つ情報をご提供しましょう。一ノ
一ノ瀬と言うと、京都を発祥とする。古い陰陽師の家系だったと記憶している。
「その様子ではご存じ無いようですね。一ノ瀬武臣はデスク組の中では有名な若手の保守派として知られています」
「一ノ瀬武臣ってあの一ノ瀬ですか……」
いろはが大きな声で驚いた。
はて誰だろう?
そんな事を考えているといろはが丁寧に説明してくれる。
「今回、先輩に依頼を渋った張本人ですよ! 更に上からの鶴の一声で折れましたけど……」
「あーそこへ繋がる訳か……」
もしかして、一ノ瀬武臣と言う人物はあの場所にいる何かに心辺りがあったのか? 高位の妖であり、神聖をも持った鬼が配置される程の何かに……
「星川さんは御存じのようですね。端的に一ノ瀬武臣と言う人物を表せば、現状維持を一番に考える自己保身野郎です」
「酷い言われようですね」
寧々がボソっと呟いた。
「恐らくは彼を始めとする現状維持派は彼女……坂上鈴鹿さんの秘匿死刑を求めるでしょう。ですが、私個人としては使えるモノは使うべきだと考えています。封印・結界班としてはあなたのように節度を持って頂きたいところですが」
「だから休めるうちに休んでおけと」
「その通り。最悪の場合呪術戦闘になるでしょうから霊力を回復させるべきです」
二人の視線は、氷見さんの言葉に甘えようと言っているように見えた。
「はぁ……」
短く深い溜息を付くとこう答えた。
「ではお言葉に甘えさせて頂きましょう……」
………
……
…
三十分ほどで目的地である。陰陽師協会東京本部に到着したようで氷見さんの声で起こされる。
「到着しました」
軽い睡眠……霊力の回復だけのつもりだったが、思いのほか疲れが取れた。
少しばかり眠気が残っているが今動かなければ、彼女を見殺しにすることになる。
それだけは避けなければいけない。
眠気を取るために目を擦っていると、氷見さんが話しかけて来た。
「随分お疲れのようですがもう一、二戦。戦えますか?」
その声は酷く心配しているように聞こえた。
「数年で大分訛ってしまいましたが多分、大丈夫ですよ」
「流石は元Sランク……」
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『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
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