第1話
どうにも憂鬱だった。何かあったわけでもないのに、どうしようもなく。普段の生活が苦痛に感じた。
だから、学校はサボることにした。サボり仲間の友人の家に籠ることにした。
昔では考えられない過ごし方だ。『優等生』の完成像とまで言われた僕が、まさかここまで変わるとは。
制服には目もくれず、白色のパーカーを手に取る。最近買った(買われた)ばかりだったが、明らかなサイズミス。着ると膝上まで隠れる。
それがなんだか気に入って、他にも何着か買ってみている。
「
1階から呼び掛ける義母の声。
「私もう会社行くから、また連絡しといてー」
「わかってるよ、いってらっしゃい。」
「いってきます。」
3、4年前から両親と別居中の僕は、母方の叔母、
年の離れた姉妹らしく、実母が37歳なのに対してこの人は26歳。まだ若い。
「ああ、学校なんて行かなくていいけど、青春は存分に謳歌すること。いいね?」
本当に、いい人だと思う。学費は両親が払っているが、その他の金銭面は全て彼女が負担してくれている。
それに、学校に行かない僕を非難するどころか、このように肯定してくれている。
「······僕も行こうかな。」
「ただいまー」
「おかえりー」
ここがサボり仲間の自宅、僕の第二の家である。「お邪魔します」もよそよそしいため、「ただいま」がベストだ。
「今日なんか早くね?」
「ああ、今日自転車で来たから」
僕の家からここまで、徒歩10分程度。なかなか近い。
「それまたなんで?」
「気分」
彼女、
黒髪ロングで、非常に整った顔立ち。ダウナーな雰囲気が強いもののかっこいい。第一印象が『イケメン』であったくらいだ。
「ねえモバイルバッテリー知らない?」
「また失くなったの?」
ほどよく散らかった部屋であるため、物が行方不明になりやすい。
趣味が合うため、どんどん物が増えていく。雑誌にゲームに漫画に小説に服に······。
「んー、まあいいや、ゲームするか」
「格ゲーやろ、最近ハマってる」
と、各々好きなことをしたり、一緒に何かしたり、互いに心地よい空間が確立されている。
今日はバイトもないし、夜中まではいようか。
「廻、起きろ」
部屋の窓から差し込む日の光が昼寝にはあまりにも心地よく、気付けばベッドの中で寝てしまっていた。
呼ばれて起きてみれば、隣では燈摩も布団の中にいた。肘をたててこちらを向いている。
「なに?」
「もう学校も終わる時間だし、外行こ」
いつの間にかそんな時間だった。
「どこ行く?」
「最近できた喫茶店とか」
ゆっくりと布団から出て、ゆっくりと準備を始める。
燈摩も僕と同じくオーバーサイズのパーカーを来ている。こちらは黒だが、ほぼペアルックか。
「まあ行くか、財布とスマホ持って」
2人で部屋を出て、同時にあくびをして、喫茶店に向かった。
────────────────────
○深月廻と王子燈摩について○
もともと優等生で皆からの信頼が厚かった廻と、問題は起こさないものの不登校気味で友好関係が極僅かであった不良燈摩。
が、実は······
良いのは表面上だけで本心は毎日が憂鬱で堪らなかった廻と、上辺を作らずそのままの自分で生きているだけの燈摩。
廻「王子さん、すごいなあ(憧れ)」
燈摩「深月って、なんであんな気張ってんの
(心配)」
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