【祝!1万PV突破!】学校一の美少女の彼氏になったけど、学校で二番目に可愛い美少女と同居してます

ハンくん

プロローグ 俺たちが付き合うことになった訳

桜井さくらいさん、中学の頃からずっと好きでした! 俺と付き合ってくれませんか?」


 春の夕暮れが差し込むガランとした教室で、俺、雨宮あまみや春希はるきは告白────ではなく、その練習をしていた。

 唐突だが、実は明日、中学生の頃から高校二年生の現在に至るまで学校一の美少女と呼ばれ続けてきた桜井さくらい紗織さおりさんに気持ちを伝えようと思っているからだ。


「うーん……さっきのだとどれくらい好きかが伝わりにくいか」


 言葉を考え直し、大きく深呼吸をする。


「桜井さん、中学生の頃から君のことが頭が離れないくらい、ずっと好きでした! 俺と付き合ってくれませんか?」


 本番をイメージして、頭を下げて手を差し出す。


 (あんま変わらないし少し重すぎるかな? もう一回やり直しだな)


 そう思った矢先────


「────はい。私もずっと雨宮くんのことが好きでした! こんな私で良ければよろしくお願いしますね?」


 とても透き通った声がするのと共に手を握り返される感触があった。

 気のせいかな、と思って顔をあげると、まるで有名な芸術家が作った彫刻の様に顔立ちの整った顔が目の前に現れる。

 トレードマークである明るめの茶色で染めれたサラサラの長髪が夕日に照らされ、美しさがより惹きたてられていた。

 そこに居たのは────桜井紗織さんだった。


「え?」


「え?」


 何で桜井さんがここに……?

 自分にとって都合の良い夢でも見ているのだろうか?

 うん、そうだ。これは夢だ。夢に違いない。夢じゃない訳がない。

 ならば何をしても許されるはず……!


「どうしたの雨宮くん?」


「いや、何でもないよ。君と付き合えるのが嬉しすぎて心の中で喜んでいただけだよ」


 俺はそう言って、桜井さんを抱きしめる。

 シャンプーの匂いなのか柔軟剤の匂いなのか、はたまた桜井さんの匂いなのか、甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 彼女の身体は柔らかくて、温かかった。

 何とも言い難い幸せな気持ちが俺の心を満たす。


「ちょっ…………雨宮くん! 嬉しいけど恥ずかしいし、誰か来るかもしれないから……」


「大丈夫だ、桜井さん。これは俺の妄想で作られた空想の世界だから問題ない」


「何を言ってるの!? 問題しかないよ!?」


「俺と君が付き合うのが何か問題でも?」


「そこじゃないよ! 問題なのは、雨宮くんの発言と、放課後の教室で誰もいない中抱き合っているこの状況だよ!?」


 彼女がそう叫んだ瞬間────


「下校時刻だぞー。残ってるやつはもう帰…………れ…………?」


 俺たちの担任─────紫鶴しづる先生が見回りに来た。


「あ〜…………事故……だよな? いや、桜井の顔が真っ赤だし事後か……? まぁいい。優等生の桜井が相手ってことで、今回は見なかったことにしてやる。でも、今度からは家かホテ…………」


「ち、ち、ち、違いますっ!!! そういうのじゃないし、事後でもないです! ただ、トチ狂った雨宮くんが急に抱きついてきただけです!!」


「はやくも別れの危機!?」


 確かに現実ならトチ狂ってるだろうけど夢だから問題ないはず…………ん? 待てよ?


「先生!」


「何だ、雨宮? 先に言っておくが、先生は良いホテルとか知らないぞ? 私は生まれてこの方26年、彼氏とか出来たことないからな。この前だって合コンでいい感じだったのに…………くっ! あ、それともう一つあるんだが……」


「「それはまた別の機会に!!」」


 何とか2人で先生を止める事に成功。これ以上、先生の悲しい話を聞くのは俺の良心が耐えられない。それよりも…………


「先生、これって…………もしかして現実ですか?」


「もしかしなくても現実だよ。先生もとても悲しいが、残念ながら現実だ」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


「いや、えぇぇ!? じゃなくて! だからさっき先生が来る前に、問題しかないって言ったじゃん!」


「もうダメだ……おしまいダァ…………」


「やっぱりな。問題あることは学校じゃなくてホテ…………」


「先生、私そういう意味で言ったんじゃないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁこの世の終わりダァぁぁぁぁぁぁ」


「ひゃっ! あ、雨宮くんっ!? こ、これ以上強く抱きしめないで! 色々と耐えられないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 その後、騒ぎを聞きつけた他クラスの先生までもが現れ、ひとまずこの混乱カオスは終了する────かと思われたが…………


 担任の「彼らは今から未来を繋ぐ、大事な用事があるのだ! 私の分まで少子化を止めてくれると信じて────」とかいう倫理的にアウトな発言等によって、副校長が召喚される事態にまで発展し、俺と桜井さんが解放されるまでに、一時間近くの時間を催したのだった。


 ちなみに、釈明は全て桜井さんがしてくれたそうで、ここだけの話に終わった。(後日談)

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