遇麗美人(うるわしき おとめに あい たまひき)

捨 十郎

前置き

第0話 前置き

 娘が生まれた。

 しかしその始まりはけっして楽なものではなかった。

 もちろん人により人生の苦楽が違うのは理解している。私たちよりよっぽど苦労した人は多くいるだろうし、そもそもそのスタートラインに立ちたくても立てない、または機会に恵まれなかった人もいることは想像できる。

 ワーストではないことで、記録をすることにあまり意味はないかもしれない。個人が特定できないように曖昧にしていることはそれに輪をかけているだろう。

 それでも記録をしておきたい。娘にいつか話すために。それ以上に自分への自戒のために。

 お前の娘は妻と親や医者を始めとした、たくさんの人の善意と協力で授かることのできた宝物なのだと。

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