最強の男 ―雪平―
とろり。
第1話 ―雪平―
ここは巨大都市アルデバラン。大通りの喧騒を離れ、路地裏の居酒屋で酒を飲む男がいた。
「美味いね。さすがはアルデバランの酒だ」
男は酒を豪快に飲む。クイッと酒瓶を逆さまにすると、アルコール度数の高い酒を喉に通した。
「お客さん、いい飲みっぷりだね。これはサービスだ。持ってけ」
店主が持ってきたのは、長い年月をかけて造られた地酒だった。
「こんな高級なもん、俺がただでもらっても?」
「もちろんだ。あんたはそこら辺の
「俺っちは
「ほぅ。ジパング。なかなか珍しいところから来たな。どおりで酒に強いと思った。それで、この巨大都市アルデバランに何の用だ?」
「特には無い。ただふらふらと旅をしているだけさ」
「で、名は?」
「名前か?
ッッッ!!!
店主は男の名前を聞くと、口に含んだ安い酒を噴き出した。
「ユ、ユキヒラって、あのユキヒラか?」
「あ? 俺っち別に有名になるようなことは――」
店主のおっさんは雪平の首を引き寄せると、「悪いことは言わねぇ。あんたはここにいちゃ命がいくらあってもたらん。賞金稼ぎがそこら中うろうろしてる。店を出たらすぐに南の小さな街に行け」、雪平の耳もとで囁いた。
「ったくよー。いい酒飲んでたのによー。ほらよっ」
おっさんは雪平から代金を受け取った。希少な金貨を初めて目にしたおっさんは、お礼とばかりに南の街への地図を雪平に渡した。
のれんをくぐり、店を出る。路地裏を高く昇った太陽が照らす。雪平は眩しい顔をしつつ、路地を抜け――
「お~っと、兄ちゃん。こっから先は地獄だぜ?」
チンピラ三人に雪平は囲まれた。
「あんた、本当にあのユキヒラか? 一億の賞金首とは思えねぇな」
「
「それはさっき聞いた」
「兄貴、一億あったら遊んで暮らせますぜ!」
「それもさっき聞いた! お前らちっと黙ってろ!」
リーダー格の男が近寄る。酔いの回り始めた雪平の顔面を手のひらでぺちぺちと叩くものだから「ああ?」と雪平に睨み付けられた。
「ひっ!」
男は一歩引く。が、すぐに気を引き締め右拳を突き出した。その
そして、リーダー格の男は声にならない声を出しながら、倒れ込んだ。
「安心しろ、手加減してある。死にはしない」
「ひっ! バ、バケモンだ!」
「に、逃げろ!!」
手下の二人はリーダーの男を背負うとその場を後にした。
ジュッと
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