第13話 大切なのは良い人のフリをする事。
「——それにしても優しいねー? あーんな事やこーんな事まで話しちゃうんだから」
声の高いその男の姿は昨晩よりもハッキリわかる。背が高く、全体的に細い。それを皮の胸当てや軽そうな衣服で覆っていた。
「ひっ……!」
お袋がガタガタと震えている。
「うわー。傷つくなあ? 昨日はあんなに良い声で鳴いてたのに。いやー、ウォルフくんにも聞かせてあげたかったぜ」
良い声で鳴く?
「お願いします! 子供の前では——」
「コレ、何かわかる?」
痩せ男が、腰に下げていた小袋を取って、見せびらかした。
「あ、あ……」
お袋がそれを見つめる。
「昨日あんたに使ったクスリ。あんたらが育ててたやつとは別のやつだけどね? いやーお母さん! 気持ち良かったでしょ?」
「おい! ガキの前だぞ!?」
オッさんが口を挟んだ。
「あははっ、やっぱり優しい。そこのオジさんはね? 以前はそこそこ有名な高利貸しだったんだ。金利も払えない負債者に良い仕事紹介してあげたり、土地を高く売る方法を紹介してあげたり、とにかく親切で評判だった」
「そ、それは良いだろ!」
痩せ男はオッさんを無視する。
「でもね。良い人ってのは損をする生き物なんだ。大切なのは『良い人のフリ』をするって事。だから泣きついて来たどうしょうもないクズの借金を立て替えてさ、回収する前に逃げられる。噂を聞きつけた別のクズにも貸した金を踏み倒される。ふふ、踏んだり蹴ったりだよね? 今ではこのオジさんも借金まみれ! 返済する為にこうやって、闇ギルドがくれる仕事をコツコツこなしてるってワケ! あはははっ」
オッさんは下を向いて震えている。
「——ちなみにウォルフくん、もう聞いてるかもしれないけど、キミのお父さんとお母さんは悪い人! このクスリは一瞬だけ人を幸せにしてくれるけど、最終的にはその何倍も不幸にする悪魔のオクスリ! どれくらい不幸かっていうと、コレナシでは生きていられないくらい! こんなのを育ててたんだぜ? しかも——」
痩せ男は小袋を手の平の上で、少しだけ傾けた。白い粉がこぼれる。
「お母さんはこのクスリの味をもう知っちゃった! 昨晩マ○コに塗られてアヘアヘしてたよ? 俺のちんちんが入ってた時なんか、もうスッゴイ声で鳴いてたんだから! キミは寝てたから知らないだろうけどさ!」
お袋が痩せ男に駆け寄って両膝を地面につけた。
「やめて! それ以上何も言わないで!」
「そんな事言ってー? 欲しいから俺に寄って来たんでしょー? へへ、また良い声で鳴かせてやるって。今度はガキの真ん前で」
別の足音も近づいて来る。
「おい! でっけえ声出しやがって!」
この男も昨日居た奴だ。小太りで粗暴そうな男。
「お願いです! 助けて!」
お袋が小太りに助けを求めた。
「良いぜ? 俺にも一発やらせてくれたらな?」
「駄目だろー? 独り占めはさー?」
「よく言うぜ? 昨日は一人でお楽しみだったくせに。今度は俺も混ぜろよ?」
お袋は項垂れ、尚も懇願する。
「お願いします。せめて子供の前では……」
許せねえ。
「母さん! こんな奴ら俺がぶっ殺してやる! おじさん! 縄をほどいて!」
俺はオッさんを見るが、顔を背けられた。
「ほどけるワケねえよなぁ? コレでガキも女も逃げちゃああんた、オシゴト貰えなくなるんだからさ」
二人の悪魔がにたにたと笑う。
「す、すまねえ……!」
「そんな」
痩せ男がお袋に近づき、ズボンを下ろした。そそり勃ったソレに、手の平の白い粉を塗りたくる。
「うひょっ! ……なぁ、お母さん? コレ、綺麗に舐め取ってよ? そしたら今日はそれで勘弁してあげるからさ」
ソレをお袋の顔に、近づけた。
「おい、それじゃあ俺はどうなる?」
「あん? じゃあお前も同じ事して貰えば良いじゃん?」
「駄目だ。俺はぶち込みてえ気分なんだよ」
「ええー?」
二人は好き勝手にそんな事を言い合う。
「てめえら! ふざけんじゃねえ! 殺してやる!」
手さえ、足さえ縛られてなければ。魔法を使うアイツさえいなければこんな奴ら、なんて事はないのに。
「あー怖い。そうやって一人殺して得意げになってたよねー? でも、動けないてめえには何もできねえよ、このクソ
「俺、やっぱ良いわ」
痩せ男の煽りを遮って小太りが言った。
「は? お前までガキに同情したってか?」
痩せ男が大袈裟に驚いた
「違えって。このガキで良いって事だ」
小太りが俺を見て舌舐めずりした。
「ああなるほどー。あんたも好きねー?」
痩せ男もニタリ顔を取り戻す。
「——デワデワ皆さま、楽しんで参りましょー!」
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