賢子(たかいこ)さんは、語りたい

結音(Yuine)

新枕

「「「あああ」」」


三人の声が重なった。


『いかがありけむ、人のけじめ見てたてまつりくべき御仲にもあらぬに、男君はとく起きたまひて、女君はさらに起きたまわぬあしたあり。』

(『源氏物語』より)


藤原「やっちゃったね」

清原「ついに、ヤっちゃいましたね」

和泉「あらららら」


藤原「源氏げんじってさ、このために若紫わかむらさきを引き取ったんだっけ?」

清原「源氏も男だってことだよね」

和泉「若紫さんは、突然のことで、さぞ驚かれたことでしょうね」


藤原「和泉いずみ、それ、おもしろい」

和泉「なんで?」


清原「源氏に抱かれて、なんぼの世界で。喜ばない女はいないってこと?」


藤原「清原きよはら、それ、言い過ぎ(笑)」

清原「そう? 藤原ふじわらさんだって、そう思ってるんじゃないの?」


和泉「え? そうなの? ゆかりちゃん……」


藤原「和泉いずみ、お願い。そんな目で見ないで」


清原「藤原さんって、ほんと、和泉さんと仲いいよね」


和泉「そうなの! ゆかりちゃんとはなは仲良しなの!」

藤原「……」


藤原「でもさ。やっぱり、突然のこと過ぎて、若紫も、状況が理解できなかったんだろうね」

清原「うん。怒って、起きてこなかったって」

和泉「若紫さんが怒るのも無理ないですよ」


和泉「お兄様としたっていたかたが、ある日突然、オオカミさんに変貌するだなんて」


和泉「あんなに優しかったひかるの君が……(泣)」


清原「和泉さん……」

藤原「それくらい、ショックだったってことだね」


和泉「花も、何がめでたいことなのか、分かりません」


清原「うん、まあ……」

藤原「憧れの源氏と夫婦めおとになれたというのにねぇ」


藤原「複雑よね、女心おんなごころは」


清原「うん」

和泉「(うん、うん)」


泣き顔を隠しながら、激しく頷く和泉の顔を、藤原と清原は「かわいいなぁ」と思いながら見ていた。







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